6月23日、映画の内容を10分ほどに編集した、いわゆる「ファスト映画」を動画投稿サイトに公開したとして、宮城県警は著作権法違反の疑いで札幌市に住む男ら3人を逮捕した。コロナ禍に急増した「ファスト映画」による被害総額は956億円と推計されているが、逮捕者が出るのは今回が全国でも初となる。
「『ファスト映画』は『あらすじ映画』や『ファストシネマ』とも言われ、映画の映像や静止画を使用しながら字幕やナレーションをつけて映画の内容を短くまとめて紹介した動画のことを指します。コロナ禍で映画館が休業に追い込まれるなど厳しい状況が続く中、『ファスト映画』を扱うチャンネルはここ1年で5倍以上に増加し、2000本以上の動画が投稿され、映画業界は大きな被害を受けていたのです」(社会部記者)
「ファスト映画」の急増を受け、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が映画会社と連携して、YouTubeの本社があるアメリカの裁判所に動画投稿者の情報開示を求め、「ファスト映画」の捜査を進めていた宮城県警に被害届を出したことで逮捕につながった。
「2時間の上映時間に耐えられない若者が増えたことも『ファスト映画』が急増した原因とみられています。最近では映像配信サービスでも倍速で見られるところがほとんどですし、YouTubeの生配信も切り抜き動画が活況ですから、映画も要点だけを短くまとめたものが観たいという人も多いのでしょう。しかも『ファスト映画』は映像配信サービスなどから映像を取ってきて編集するだけなので原資はほとんどかからず、人気のチャンネルは広告収入だけで2000万円以上を稼ぎ出していたと言われていますから、新規参入が多かったのも当然ですね」(ITジャーナリスト)
これ以上の被害が増えないことを願うばかりだ。
(小林洋三)