農作物を食い荒らすだけでは飽き足らず、住宅街を我が物顔で歩き回り、民家に侵入し冷蔵庫を物色。さらには墓地に供えられた酒を飲み干すなど、やりたい放題だった小田原の“凶暴ザル”に対し、神奈川県と小田原市が「管理が困難」として、今秋から「全頭捕獲による完全駆除」に向け動き出すことになった。
全国紙社会部記者が語る。
「今回、県と市が全頭捕獲を決めた迷惑ザルの『H群』は、もともと生息していた広河原(湯河原町)の頭文字から名付けられたもので、生息地からエサを求めて海岸線を移動し、農地や小田原市内(早川地区、片浦地区など)に出没するようになった集団。小田原市内には発見された地名に基づいて『S群』『H群』という2つのニホンザルの群れが40年ほど前から生息しているのですが、あまりの凶暴さから『S群』は全頭駆除の対象になり、市が4年の歳月をかけ、去年ようやく駆除を終えたばかりだったんです。ところが、その隙に今度は『H群』のサルが狂暴化し手が付けられなくなってしまったというわけです」
今回、駆除対処となる「H群」は、確認されているだけで19頭。報道によれば、被害は半年間で3800件にも及び、1000万円近い被害を受けたみかん農家もあるという。
「サルは一度食べた味は忘れないため、実りの時期になると毎年やってきてはみかんを食い荒らすため、サルの被害に耐えかね、栽培していたみかんをサルが好まないものに変える品種改良まで行った農家もあると言います。1年間、精魂込めて作ったみかんを毎年、サルに食い荒らされる精神的な痛みは計り知れない。しかも、それによって収入源を断たれるわけですからね。本当に悔しい思いをされた農家は少なくなかったはずです」(前出・記者)
報道を受け、SNS上には《町中で猿たちに乱暴狼藉され、怯えた毎日を過ごしている地元住民や農家の人々の苦痛を考えると一刻も早く捕獲すべき》《最適な収穫期間近に被害にあうことが多いので、生産者の精神的なショックを考えると辛くなる》《そもそもは、人間が餌付けしたことが原因。これを教訓に動物との距離を持つことを胆に銘じるべき》といったコメントであふれたが、なかには《反対勢力があるのもわかるが、40年間の被害でやっと? 行政の遅さには怒りを通り越し、もはや呆れるしかない》という厳しい意見も。
この秋以降に実施される「H群凶悪ザル」の捕獲作戦は、「はこわな」や「センサー式はこわな」「銃器による捕獲」「囲いわな」などが中心になるというが、
「とにかくサルは頭がいいので、追い払っても、危険がないと判断すればすぐに戻ってきてしまう。しかも市街地を移動するため、罠をしかけてもなかなか効果的な対応が難しい。山の中ならともかく、街中では電気柵の設備も難しいですからね。今後はそれらをどうやってクリアしていくかが課題ですが、まずは全頭捕獲の方針を打ち出し一歩踏み出されたわけですから、周辺住民の期待も膨らむばかりです」(前出・記者)
ようやく、これでサルたちとの40年に渡る戦争に終止符が打たれることを願うばかりだ。
(灯倫太郎)