「東京五輪大会期間中、選手村においての選手による酒の持ち込みは可能です!」
先月31日、国会内で開かれた野党の会合で、選手村を運用する大会組織委員会が発表したこの公式見解に、誰もが耳を疑ったことは記憶に新しい。
事務局によれば、選手村ではケータリングサービスで酒が注文できるほか、選手自身のアルコール持参も禁止されていないのだという。この見解をうけ、同日会見した共産党の小池晃書記局長は「お酒を出す店やお酒を卸す納入業者は深刻な危機にひんして皆苦しんでいる。『国民は酒を飲むな』と言いながら、『オリンピックなら飲んでいい』。これは怒りますよね」と指摘。さらに「オリンピックと名前がつけばお酒を出して、飲んでいいとなると、日本中の居酒屋が『選手村』と名前を変えるんじゃないかと言いたくなるやり方だ。こういう筋の通らないことをやってはいけない」と厳しく批判した。
全国紙社会部記者が語る。
「推進本部事務局によれば、酒持ち込み0Kの理由を、選手村は各国選手が交流できる場所だから、としていますが、国民にこれだけ飲み会自粛を求めておいて、選手村での飲み会はOKとは、どう考えてもおかしな話。アスリートたちも試合前は、それこそ事務局が言うように『節度』を持った行動をするでしょうが、競技が終わっても果たしてそうしていられるかどうか。選手や関係者が部屋で一人飲みするとは思えませんし、酒が入れば当然会話も弾むでしょう。欧米人の発音のほうが日本語のそれより飛沫が飛びやすい、という検証実験もありますからね。この常軌を逸した主催者側の『アスリート特権』に、国民から怒りの声が上がるのは至極当然のことだと思いますね」
実際、SNS上には《国民に居酒屋行くな、路上飲みするな、と言っておきながら、選手村では酒池肉林かよ?どれだけ特別扱いするんだ!》《守るべきは日本国民の生命。安心・安全が聞いて呆れる。選手村で感染爆発が起こったらだれが責任取るんだ》といった批判の声が渦まいた。
今大会ではかねてから、大量のゴム製品の無料配布が問題視されているが、前出の記者も苦笑いしながら語る。
「オリ・パラ大会では毎回、選手村や大会競技施設でスキンが無料で配布されていますが、これは、HIV感染予防を目的に1988年のソウル大会からはじまったもの。ソウルでは約8500個でしたが、2000年のシドニーでは12万個、08年の北京でも10万個、12年のロンドンでも10万個が無料配布され、前回の開催地、リオデジャネイロ大会では、なんと約45万個が配られました。置かれた場所は、選手村や競技会場のトイレや洗面所、医務室、プレスセンターなどで、今回の東京大会でも約16万個が無料配布されるといいます。つまり、裏を返せば、彼らの『節度』に疑問があるからです。そんな中で飲酒OK、スキン使い放題にして、はたして事務局が言う『節度』が保てるかどうか。選手村が『究極の濃厚接触』の場になる可能性は否定できないということです」
現在、新型コロナウイルス感染拡大の「第4波」に襲われている日本では、東京をはじめ10都道府県に緊急事態宣言が発令。うち9都道府県が、5月31日の期限を6月20日まで延長したばかりだ。「3密」回避や人流停止が叫ばれる中での、このバカげた「おもてなし」は狂気の沙汰と言わざるを得ない。
(灯倫太郎)