「もう正社員ならどこでもいいや…という気持ちがあったのは事実ですが、正直、騙された思いでいっぱいです。これじゃあ、ピンク嬢と変わりませんよ」
こう嘆くのは昨年春に都内の有名大学を卒業したA子さん。在学中に中堅化粧品メーカーから内定を得ていたのだが、コロナ禍の業績悪化により、就職を取り消される事態に。華々しく社会人生活をスタートさせる予定が、暗礁に乗り上げてしまったという。
「東京にいても仕方ないので、実家に戻ろうとも思ったのですが、地元はコロナ感染者が少ないこともあって、何かと冷たい目で見られそうで…。帰るタイミングを逃してしまったんです。だから昨年の4月からはとにかくどこでもいいから就職して両親を安心させたい。そんな気持ちだったんです」(A子さん)
もともと美容業界への就職を目指していた彼女の目についたのが、「化粧品販売員、正社員」というX社の求人広告だった。卒業後も「第二新卒」の枠で就職活動を始めていたが、「のちに化粧品メーカーで面接を受ける際にプラスになれば…」との思いもあって、応募するとあっさり採用された。
「化粧品を売る仕事だと思ったら、配属されたのは男性向けのエステ店でした。その店舗では男性向けのボディケア商品を売っているので、あながちウソとも言いきれないのですが、まさか、厳しいノルマに性ハラまで受けるとは思いもしませんでした」
化粧品販売員だと思って就職したA子さんはこう言って憤慨する。その業務内容を聞くと…。
「エステとは名ばかりのピンク店ですよ。試用期間の3カ月を過ぎると、『指名数はこれだけ達成して』などとノルマを課されて、クリアしないと給与の特別業務給の項目がかなり減らされるんです。じつはこの店、ネット掲示板でも『お願いすればヤッてくれる』『美人さんが抜いてくれる』などの情報が書き込まれていて、それ目当てのお客さんがほとんど。やはりそういうサービスをしてくれる女性スタッフにお客さんがつくので、店側も違法とわかっていても見て見ぬふりですよ。エステの店長も男性で、施術着のスカートの丈を短くするよう言ってきたりと性ハラの常習犯。完全に開き直った女性スタッフの中には、お客相手にパパ活する子もいて、性の無法地帯になってますね」(A子さん)
たしかに、化粧品販売員といわゆる“抜きあり”のマッサージでは業務内容がまったく異なる。このように、コロナ禍の就職難につけこみ、「偽装求人」でヤバい仕事をあっせんされたというケースは増えているようだ。裏社会に詳しいジャーナリストはこう話す。
「もっとも気をつけるべきはSNS上の求人広告。《メンズリフレ高収入》《日払い可のエステスタッフ》などの文言につられてDMを送ったら、ピンク産業だったという例はいくらでもあります。私が取材したシングルマザーの女性は、《在宅ワークで高収入》と謡う求人に応募したところ、オンライン飲み会を盛り上げるコンパニオンの仕事で、過激な脱ぎ行為を強要されて、拒否したところ『契約違反だ。違約金を払え』と脅されたそうですからね。くれぐれも注意が必要です」
コロナ禍にSNS上で怪しい求人情報を目にする機会も増えたが、うまい話にはウラがあることをお忘れなく…。
(倉田はじめ)