失策ワースト返上へ!矢野阪神、巨人・山本獲得で生じたスカウト陣の大誤算

 異例の金銭トレードが成立した。巨人・山本泰寛内野手が阪神に移籍することが両球団から発表された。同一リーグ、それもライバル球団同士のトレードに驚いたファンも多かったが、阪神サイドには首を傾げる声も聞かれた。

「12球団ワーストの失策数85は、最も少ない巨人のおよそ倍。阪神にとって、内野手の補強は急務。二遊間を守れる山本の獲得は間違いなくプラスに転じるはず」(在阪記者)

 今季の山本は故障などもあり、一軍出場機会に恵まれなかった。阪神・矢野燿大監督も山本の攻守の映像などを見て「いける!」と確信したそうだが、スカウトや一部フロントは別の感想を持っていたようで…。

「堅守の内野手補強の急務はスカウトにも通達されていました。今秋のドラフト6位で内野手の中野拓夢(三菱自動車岡崎)を指名したのはそのためでした」(球界関係者)

 中野は昨年の社会人野球日本選手権で三菱自動車岡崎をベスト4に導く活躍を見せている。その後も台湾で行われたアジアウインターベースボールリーグでも、大会トップの26安打を放った。「打撃力」でアピールしてきたが、守備能力の高さは日大山形、東北福祉大時代からNPBスカウトも認めていた。

「高校、大学時代は打撃力でマイナス評価をされ、社会人野球に進みました。打撃力が高まり、スカウトの評価もうなぎ登りでしたが、『堅守の遊撃手』『守備の選手』というイメージが強い」(前出・球界関係者)

 大学を経由した社会人野球出身の選手となれば、即戦力だ。矢野監督以下、現場首脳陣に「使う」という意思確認を経て指名したのだが、ここにきて、山本のトレード獲得だ。山本は右打ち、中野は左打ち。この違いこそあれ、「守備固め」という部分では働きどころが重複する。中野を見てきたスカウトたちも驚いているはずだ。

「今、二遊間を守っている木浪、糸原と競争させるのではないか。北條を二遊間からサードにコンバートにする話も出ており、ショート定着を目指す若手の小幡は経験不足を露呈していたことからフェニックス・リーグでは一塁守備も経験しました」(前出・在阪記者)

 ドラ1の佐藤輝明にしても、三塁でスタートさせる可能性は消えていない。植田、熊谷らの若手もいて、来季の内野陣は総入れ替えとなるかもしれない。スカウトの推した新人と重複するタイプのトレード補強が、選手の発奮材料につながればいいのだが…。

(スポーツライター・飯山満)

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