事件の全容解明に向けて、この2つの逮捕劇が大きな一歩となったことは間違いない。
群馬県など北関東で今年夏ごろから頻発していた家畜や果物の盗難事件に関連して、群馬県警は10月26日、不法残留などの入管難民法違反の疑いで、同県太田市に住むベトナム人の男女13を逮捕した。
「実は8月ごろからベトナム人コミュニティの間で『豚を買わないか』といった投稿が相次ぎ、県警は170人体制で捜査に着手。すると、ほどなくして今回逮捕されたベトナム人グループが浮上し、太田市内の宅配センターから肉や果物を県内外に配送した記録を入手。彼らが住んでいた太田市内の貸家2棟から押収された冷凍鶏肉約30羽分が決め手となって、逮捕にいたったようです」(全国紙社会部記者)
自称“カラオケ店店主”という主犯格の男(39)は、「群馬のボス」というアカウントを持ち、SNSでベトナム人の”泥棒仲間”を募集していたとされる。
そして、10月28日にはベトナム人技能実習生の男ら4人が、許可を受けていない場所で豚を解体したとして、と畜場法違反容疑で埼玉県警に逮捕された。
「2つのグループは夜な夜な北関東を徘徊し、協力しながら家畜や果物を盗んでいたとみられますが、監視カメラ映像の分析によれば、家畜を運ぶ者、見張り役、運転手ときちんと役割分担がされていたようです。ただ、今年に入り群馬県内だけで、豚852頭、牛2頭、鶏144羽が盗まれ、さらにナシやブドウなど果物の窃盗被害も埼玉県を含めれば4トン以上におよんでいますからね。常識的に考えても、この人数だけで、これだけの犯行に及んだとは考えづらい。つまり、ほかにも同様のグループが存在するということ。今回の逮捕でベトナム人の“闇のコミュニティ”にメスが入ることになるでしょう」(前出・社会部記者)
夜中に豚舎や牛舎に忍び込み、手足を縛って盗み出したうえ、自宅の浴室で解体。子豚1頭1万2000円から1万4000円ほどで売りさばいていたそうだが、家畜を解体していた現場が民間住宅ということもあり、SNS上には容疑者らへの怒りとともに、
《アパートの一室で家畜の解体が行われた事を想像すると何か猟奇的だ》《殺人があった訳じゃないし、遺体損壊事件現場でもないから事故物件(?)にはならない? でも、アパートの大家さん……大変そうだなぁ》《こういう事件があると外国人に貸すことを渋る大家が増えて、結果的に借りることができた家に無断で大勢が住み着いてまた問題起こすんだろうな》
といったアパートの所有者への同情も多く、今回の逮捕者の大半が技能実習生として入国していた点について、
《安易な労働力の補充のための外国人実習制度の早期改善をしてもらいたい》《技能実習制度が不法入国の温床になっている。待遇にも問題ありのようだけど、審査をきちんとしてほしい》と、その問題点を指摘する声も多く見られた。
もちろん、悪事に手を染める外国人はほんの一握りに過ぎず、差別はあってはならないが…。前出の社会部記者が言う。
「逮捕された容疑者のなかには『コロナで仕事がなくなったため』と、新型コロナを引き合いに出し、『やむにやまれず』と泣きを入れている者もいるようですが、県警が彼らのアパートから押収した”ブツ”の中には牛刀だけでなく、金属バットや模造刀といった凶器も含まれていたといいますからね。つまり、同様の武装化グループは、家畜窃盗だけでなく、人に危害を及ぼすような強盗事件を起こす可能性もゼロではない。警察もその点を踏まえて捜査に着手しているようです」
現時点での家畜被害は、群馬、埼玉、栃木、茨城の4県で22件。被害総額は3000万円以上。関係者が枕を高くして眠るためにも、不良窃盗グループの根絶を願いたい。
(灯倫太郎)