車検や駐車場などの維持費負担がないことで、ニーズが拡大している「カーシェアリング」。なかでも、企業運営のカーシェアでは借りられないような珍しい車種や高級車が借りられることで、ここ数年、人気急上昇中なのが「個人間カーシェアリング」だ。
だが、台数や利用者数が増加したことで、個人間カーシェアサービスを介した「乗り逃げ売却事件」が未遂を含め、急増しているというのだ。社会部記者が語る。
「個人間カーシェアというのは、事前に利用者がスマートフォンのアプリを通じて、登録された個人所有の車からお好みの車種や利用期間などを選択、料金を支払い、貸してくれる人と会った際に免許証を提示して本人確認して、車を借りるというシステム。ところが、犯人たちは事前に、その車を個人売買サイトなどに出品し、商談を成立させた後で車を受け取り、それを手渡すという手口を使っています。これは、事前にクルマの買い手を決めておくことで、免許証偽造などの時間を含め、車の受け取りから現金化までを短時間で済ませ、事件発覚を遅らせる狙いがあるようです」
今年に入ってから、大阪など関西圏を中心に同様の手口での被害が続出。大阪府警は組織的なグループによる詐欺事件の可能性も視野に捜査を進めているといわれる。
前出の記者が続ける。
「犯人たちの目的は、あくまでも売却ですから、高級車や希少価値がある車が狙われやすい。なので、短期間で1000万円以上の高級車ばかり借りている利用者は要注意。事前調査と評価獲得が目的とも考えられます。また、問い合わせのDMで走行距離やオプション装備、購入時期、あるいは『車検証はどこに置いてあるか』など、やたらと細かく車の情報を聞いてくる場合も、怪しいと思ったほうがいい。これも、個人売買サイトなどに出品する際に掲載する情報収集である場合が多く、あとは、『シェア料金を倍支払うから運営会社を通さず貸してほしい』と依頼してくる場合も危ないと思って間違いないでしょう」
こうした盗難や詐欺被害急増を受け、累計登録人数45万人、登録車両台数約2万台と日本最大のカーシェアサービスを展開する「Anyca(エニカ)」では、損保ジャパンと共同で個人間カーシェア専用保険「カーシェアプロテクト」を新たに導入。事前にクルマに適した補償プランをシェア車両のオーナーが設定し、シェアする側のドライバーはその保険を契約することで設定された補償と共により安心安全なカーシェアを目指すという。
ともあれ、手を変え品を変え進化し続ける詐欺犯罪グループ。騙されない冷静な判断力こそが、最大の防御と言えるだろう。
(灯倫太郎)