昨年は、子牛や豚の盗難事件が話題になったが、今年に入り、なんとトラクターなどの農業機械の盗難が相次いでいる。
新潟県上越市では、今年4中旬、エンジンキーを抜いた状態で、農道に止めておいたトラクター2台が何者かによって盗まれ、さらに30日にも1台が持ち去られるという被害が発生。いずれの手口も、トラクターのキャビンをこじ開け、エンジンをかけたあとトラックに積みこむ、といったものだが、「実は子牛や豚の盗難事件ばかりがクローズアップされていましたが、ここ数年、北関東の農家を中心に同様の手口でのトラクターなどの盗難事件が相次いでいたんです」というのは、全国紙社会部記者だ。
「特に被害が多いのが群馬・栃木両県で、昨年、両県では合計47件の盗難被害があり、前年比で19件増加したと言われます。また、埼玉県内でも県北部を中心に被害が発生しており、トラクターばかりか、ダンプと草刈り機をセットで盗まれた農家もありました。4月に上越市で盗まれた2台は同一の個人所有のもので、50馬力と51馬力の2種。トラクターはエンジンキーを抜いた状態で停車していたにもかかわらず、朝、確認すると跡形もなく消えていたそうです。新潟県では柏崎市でも4月に入り、農場やほ場にとめていたトラクターの盗難被害が相次いで発生。ちょうど、各市が防災行政無線などを活用しトラクター盗難について注意喚起していた矢先の事件だったこともあり、関係者は皆、ショックを隠し切れないようです」(同記者)
とはいえ、新車、中古車問わず、トラクターには車体番号が刻まれているはず。犯人たちはどうやって盗んだトラクターを売りさばいているのか。あるいは、ほかに目的があるのだろうか……。
「たしかにトラクターには車体番号があり、日本の販売店で購入したものであれば型が記録されているため、中古として国内で売りに出しても、そのトラクターの来歴が分かってしまいます。かといって、車体番号を削れば、当然怪しまれるリスクは高い。なので、おそらく犯人たちは、機械をばらして部品別に分け、国内、あるいは海外に流通しているとみられています」(前出の記者)
ただ、現段階では当局も、犯人グループが日本人なのか、外国人なのか、あるいは具体的にどこの国に「ブツ」を流しているか、など正確な情報は掴めていないようだ。
一連のニュースを受け、SNS上には、《日本の農機機械は海外(特に東南アジア諸国)では大人気だから、どんなボロい農機でも売れるんだろうなぁ》《まさか、同業者だったら悲しすぎるが……》《一時的に金が手に入っても、持続出来る収入でなければロクな未来は無いぞ》といった意見が相次ぎ、なかには《農家が作ってきたのは、あなたが毎日口にしてきたもの。これからも獄中で口にして生きていかなければならない。その現実を考えてほしい》というコメントも。最新式なら、楽勝で高級外車が1台買える、というトラクター。これ以上、農家を泣かせないためにも、警察には一日も早い犯人逮捕を望みたいものだ。
(灯倫太郎)