「緊急事態宣言」一部解除で懸念される「自粛警察」の“一極集中攻撃”

「4月末には店のシャッターに『この事態でまだ営業?自粛しろよ! 次発見したら、警察を呼びます!』と書かれた貼り紙があり、それからもたびたび無言電話がありました。一時は被害届を出して告訴することも考えましたが、さらに悪評が立つのでは、と思い怖くてそれも出来ない。本当に鬱になりそうですよ」 

 そう言って肩を落とすのは東京都内で居酒屋を営む50代の男性だ。

 自粛ポリスによる被害が後を絶たない。自粛ポリスとはコロナ感染拡大に伴う自粛や休業要請を受け入れていないとみるや、SNSや張り紙などを使って攻撃する人たちのことだ。

「長野県では、ネットの掲示板に実在する会社名前を挙げ『コロナの感染者が勤務しているらしい』などと、うその書き込みをしたとして、名誉毀損の疑いで男が書類送検され、山形市でも、実在する飲食店を名指し『この店にはコロナ感染者がいる。コロナの巣窟だ!』などと8回もツイッターにウソ情報を書き込んだとして男が偽計業務妨害の罪で起訴されています。ただ、実際に逮捕起訴されるケースはごく一部で、大半は店側が“悪評”を広まることを恐れて泣き寝入りしているケースが多いようです」(全国紙社会部記者)

 さらに、ひとりよがりな正義感を振りかざした“暴走行為”がエスカレートしたことにより、4月末から急増しているのが「県外ナンバー狩り」だ。緊急事態宣言の発令後、「よそ者」への偏見から、県外ナンバーの車が傷つけられたり、窓ガラスが割られる事態が頻発。「県境を越えたとたん後ろからあおり運転をされた」、「車ですれ違いざまに県民から暴言も浴びせられた」というケースもあり、SNS上では、《コロナより他県ナンバー狩りのほうが怖い》《他県ナンバー狩りが怖くておひとり様ドライブすらいけなくなった……》といった声が多く寄せられている。

「もちろん、なかには単身赴任で他県に来ていたり、会社の仕事でやむなく来ている人もいるでしょうし、県民であっても、引っ越し等の事情で県外ナンバーの車に乗っている人もいるはずです。実はそんな人たちでさえも、『他県ナンバー狩り』の標的になっているんですね。『他府県ナンバーですが地元民です』などと明記されている県内在住ステッカーが売り上げを伸ばしているそうですが、自粛警察といい、県外ナンバー狩りといい、これ以上、トラブルがエスカレートしないためには、落ち着いて正しい情報を見極めるしかない。未確認情報に惑わされず、冷静さを取り戻してほしいですね」(前出・社会部記者)

 一部の地域では「緊急事態宣言」の解除が検討されているようだが、東京や大阪、北海道などは引き続き「特定警戒都道府県」と位置づけられているため、今後、彼らの標的が一極に集中する可能性もあるが、こんな時だからこそ、一呼吸おいてから、“悪意”とのソーシャル・ディスタンスを図ろうではないか!

(灯倫太郎)

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