抗酸化作用がありアンチエイジングにつながるとして人気なのが、酵素ドリンク。しかし、その効用には疑問符が付くと桑満院長はいう。
「酵素ドリンクのウリは、『人間の体には酵素があり、それが減少すると病気になったり老化が進む。だから食べ物から酵素を取り入れよう』というもの。ですが、実は人間が持つ酵素というのは栄養素ではなく、細胞内で遺伝子の塩基配列によって合成されているため増えたり減ったりするものではない。食物から酵素を取り入れて、などと称して酵素を栄養素とすること自体がトンデモ論。仮に酵素が体にとって必要なものだったとしても、体の中で分解され、ほとんどが尿となって体外に排出されてしまうので、残念ながら酵素ジュースの効果は期待できません」
そして、話題の水素水についても疑問が投げかけられる。
「水素水についてはラット実験でも抗酸化作用が認められ、医療に利用するための研究が進められていることは事実。でも、水素は原子番号1番で最も軽い原子であるため、地上周辺でとどまることができない。つまり、水素水はペットボトルなどの蓋を開けたとたん、大気中に拡散してしまうということです」
ちなみに、水素は軽いうえに水に溶けにくい性質があるので、肌から吸収、をうたい文句にしている水素風呂も、残念ながら水素を発生させるそばから逃げていくそうだから、現実的には「水素浴」は難しいと言えそうだ。
中でも、つい飛びついてしまうのがガンの民間療法を巡る情報だろう。金と時間を費やしたあげく、まったく効果がないどころか、命を縮めることになりかねないだけに、慎重な姿勢が求められるのは言うまでもない。
「例えば、『学会で発表』『特許取得』『医者が推薦』というガンに効果的だというサプリがあります。でも、調べてみると、ガン細胞に対して何らかの影響を与える物質だとしても試験管レベル、あるいは動物実験レベルの研究であり、ヒトに対する効果を示したものではないものを誇張しているケースもある。にもかかわらず、自分のところのサプリを権威づけるために、学会で発表された、あるいは医学雑誌に掲載されたと喧伝する。そして、『このサプリが多種のガンに効果がある』とアピールするのです。しかし、現代医学において多くの臓器にできてしまったガンに対して、オールマイティに治療効果のある薬など存在しません。つまり『多種のガンに効果がある』という時点で、その薬や治療法はインチキだということ。でも、それを信じて使い続け、騙されたと思った時には手の施しようがない状態に、というケースも少なくない。ですから、特に『ガンに効果的』というキーワードには注意が必要です」
とかく患者は特効薬を求めがちだが、その心理をついた、実に悪質な「ニセ医学」がはびこっているというのが現状なのだ。
「重要なのは、いつ、誰が、どんな場所や媒体でそれを発言したのか、という一次ソースを見つけることです。それがわかるだけで、ある程度、その情報の信憑性がわかるはずです。最近はインチキサイトも手が込んできて(笑)、『○× インチキ』と入力すると、逆に噂を逆手に取って、巧妙に誘導してくるケースも少なくない。だから、まずは可能なかぎり一次ソースを確認してみること。あとは、やたらに難しい医学用語を使って、もっともらしい説明をしているものや日本は遅れているが海外では当たり前とうたったもの、また、質問や批判に対して攻撃的なものは危ないと思って間違いないでしょう」
そして、前述したように「デトックス」「ガンに効果」という記述があったら、まずは怪しいと思うべきだという。
「今、日本は人類史上一番の長寿国となった。つまり、超貧困でないかぎり、長生きする。いや長生きするしかないんです。だとしたら、健康を維持するために何が必要なのか? 答えは簡単。あれこれ訳のわからないものを摂るより、その前に一駅手前で降りて歩き、百薬の長だからと次の日まで残るような酒の飲み方はしないこと。結局は適度なバランスのとれた食事と運動を心がけて、具合が悪くなったら病院へ行く。つまり、足し算ではなく引き算が大切だということ。それだけで、抜群に健康になれることを忘れないことです」
まさに極端に偏らず、中庸な生活こそが長生きの秘訣なのかもしれない。