中国の軍隊、中国人民解放軍を3カ月で辞めてしまった大学生に対する処分が厳しすぎると話題になっている。
「解放軍の英語サイトにその処分内容が掲載されたのですが、この大学生は懲罰として、今後2年間は海外渡航、国内での飛行機や長距離列車、バスを使った移動、不動産の購入、ローン契約、保険の加入、開業、大学や中東教育機関への入学が禁止される。加えて、政府機関や国営企業からは非正規雇用であっても一生、門前払いされるというのです」(週刊誌記者)
しかも4000ドル(約43万円)相当の罰金と、交通費や生活費、医療費などでかかった費用を軍に返済せねばならず、さらに加えて大学生の行為と懲罰の内容は、テレビや新聞、SNSなどに掲載されるというのだから、身ぐるみはがされた上に見せしめにも合うようなもので、もはや「非」国民扱いだ。
「あまりに早い除隊が逆鱗に触れたということなのでしょう。これを受けたメディアの報道によれば、9月に入隊してその1カ月後にはもう辞めたいと申し出たようですから。結局は11月下旬の免職だったんですが、その間約2カ月はどんな状況にあったのやら、怖い想像が働いてしまいます。サイトでは、『苦労や疲労を恐れて軍の生活に順応できなかった』『軍の辛抱強い説得にもかかわらず、除隊すると言い張った』と軍は述べています。邪推すれば、もしかしたら上(共産党)から何か指導でもあったタイミングでの見せしめだったのかもしれませんね」(同前)
こうした懲罰は頻繁でないものの、時折、加えられるようだ。上記メディアが中国の過去の報道を検索した結果、数年間で20人以上の元兵士が名指しされ、氏名が公表されているのが見つかったという。
7月に公表された2019年版の中国国防白書・「新時代的中国国防」によれば、人民解放軍は改革の中にあり、230万人体制から30万人の削減に成功したとしている。だがどこまで信じていいのやら。なにしろ白書の中では、「強国になっても好戦的な国は破滅する。中国国民は常に平和を愛してきた。中国が他国にそのような苦しみを与えることは決してない」と美辞麗句を並べ立てた挙句、「中華人民共和国は、 建国以来 70年が経過したにもかかわらず、一度も戦争や紛争を起こしていない」と、1979年に行われたベトナムとの中越戦争は無かったものとして歴史的事実さえ捻じ曲げているからだ。
「中国は徴兵制ですがそれも今は建前だけ。地域に徴兵人数が割り当てられて徴兵するわけですが、実際は徴兵する前に志願者で数が足りているからです。貧しい農村部の若者などです。中国では勝手に引っ越しすることは禁じられていますからね。現状から脱出するには志願するのが手っ取り早いんです」(同前)
ちなみに白書の公表は2015年版以来。15年版ではアメリカが脅威の対象として名指しされていなかったのが、今回は明示されている。一方、日本は逆で名指しの対象から外れている。
日本を中間に置いた場合の米中のパワーバランスが変化し、覇権争いにシフトしたためだろう。
(猫間滋)