《あまりにも期待値が高すぎて触れるのが怖い!》
そんな声がタイムラインに広がっている。発端は、大手牛丼チェーン「松屋」が6月3日からレギュラー化した「うまトマハンバーグ定食」だ。
2002年夏に580円で初登場して以来、毎年「夏の風物詩」として人気を博してきたこのメニューは、ジューシーなハンバーグを熱々の鉄板で焼き、にんにくと玉ねぎを炒めた特製トマトソースをたっぷり絡めた後、半熟玉子とチーズをトッピングする仕様だ。酸味とコク、肉汁のジューシーさが一体となる味わいは、多くのファンを虜にしている。
価格は長らく580円(税込み、以下同)のままだったが、2018年に630円、2020年に650円へと段階的に改定。2024年夏は830円とさらに値上げし、2025年6月3日からはレギュラーメニュー入りしたものの、価格はついに980円となった。
結果、SNSには《980円は高すぎる》《財布と相談しないと手が震える》といった声があふれたが、実際に口にしたリピーターは、《想像以上のトマトソースの旨味に感動した》《香ばしい鉄板の音と匂いに心が躍る》と絶賛。期待値の高さが「触れられない」ほどの心理的ハードルを生む中、その「怖さ」を突破した者だけが至福の時間を味わっているようだ。
実は、そんな「触れられない」現象は、映画の世界にも広がっている。6月6日公開の大作映画「国宝」は、任侠の一門に生まれながらも歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生をささげた主人公・立花喜久雄の50年を描いた大作。ところが、あまりのスケールの大きさと映像美に、《歌舞伎初心者がついていけるか不安》《長尺ゆえに中だるみしないか怖い》と、一部の映画ファンを尻込みさせる事態に。もっとも、公開後には、《時間を忘れるほど映像美に圧倒された》《歌舞伎の奥深さを堪能できた》といった高評価が相次ぎ、前評判の「怖さ」を払拭している。
新作グルメも大作映画も、期待が高ければ高いほど「裏切られたら損をする」と躊躇してしまうようだ。しかし、最終的にその価値を知るのは自分自身の体験にほかならない。980円のハンバーグ定食も、約3時間の大作映画も、とにもかくにも自らの舌と目で確かめてみる価値があるのかもしれない。
(ケン高田)