「危ない眼科治療」本当の常識(4)2万件以上の手術経験医師を選ぶ

 ちなみに、日本で白内障の予防薬として使われているカタリンなどは、もともと肝臓の代謝の薬として考えられたもので、白内障に対する医学的効果が証明された薬ではないというから、これまた驚きである。

 せっかく白内障が治っても視力が低下したのでは目も当てられないが、緑内障の手術は白内障よりさらに高い技術が求められる。

「緑内障には多くの手術治療法があります。例えば最も治療の困難な血管新生緑内障といった、非常に重症かつ日本では治療法がないと諦められているものも、目の中に0.6ミリという非常に細い内視鏡を入れて内視鏡モニター上で確認しながら、先の曲がった眼内レーザーで目の水を産生する毛様体への光凝固術を施術するという方法で、完全に眼圧をコントロールして治し、視力を取り戻すことができるようになりました。ただ、これは我々が高い技術を持ち、世界最先端の施設があるからこそ実現できること。裏を返せば、その2つがそろわなければ、緑内障を手術で治すことはきわめて難しく、事実、緑内障手術を完璧に行える眼科外科医は、日本では非常に少ないのです」

 医師と病院の選び方で運命を左右する眼科治療。では我々が眼科を選ぶ際、ポイントとすべき点は何か。

「近所の開業医に行くと、大学病院で診てもらいましょう、と言われることがありますが、基本的に大学病院や総合病院のような研修病院は、難しい目の病気でかかることは避けるべきです。研修病院で、かえって悪くなることも多いのです。研修とは練習のことで、患者は練習台になることが宿命づけられています。しかも大学病院など研修病院の眼科には、世界レベルと呼べる眼科外科医は多くはいません。口コミや本、インターネットなどで情報を集め、自分が納得できる医師や病院を選んだほうがいい。ただ、インターネットの情報検索システムは広告媒体なので、お金さえ払えば検索の上位に掲出される。そのまま鵜呑みにするのは危険です」

 そして病院にかかった際には医師の説明をしっかり聞いて、何かおかしいと思ったら他の医師にかかるのを躊躇しないことだ。

「特に手術は設備と医師を選ぶことが大切になるので、必ず執刀医の手術件数を尋ねてみること。最低でも5000件、できれば2万件以上の経験者が望ましく、手術の成功率もきちんと尋ねてみることです。そして慌てず冷静になって、その医師に手術を委ねてもいいかどうかを決めてください」

 患者自身が能動的に情報を集め、納得したうえで手術や治療方法を決定する。それが眼科における、間違った医療から身を守るための、唯一の方法かもしれない。

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