新ローマ教皇レオ14世はトランプ大統領の暴走を止められるのか

 フランシスコ教皇逝去により、5月8日、コンクラーベ(教皇選挙)で新教皇に選出されたレオ14世。フランシスコ教皇も初のアルゼンチン出身(両親はイタリア出身)として知られているが、今回はローマ・カトリック教会の新たな最高指導者に、アメリカ大陸出身の教皇が選ばれたとして、大きな話題になった。

 第267代のローマ教皇「レオ14世」と呼ばれることになったロバート・プレボスト枢機卿は、1955年、米シカゴ生まれの69歳。両親はスペイン系と、フランスとイタリアにルーツを持ち、少年時代から教会で礼拝の手伝い役を務め、1982年に司祭になったという。

「その3年後、30歳の時に、聖アウグスチノ修道会の布教活動でペルーに移住。ペルーで市民権を得て小教区の主任司祭や神学校の教員として10年を過ごし、たびたび故郷のアメリカにも戻り、主任司祭などを務めてきたといわれています」(国際部記者)

 前任者であるフランシスコが教皇就任後、ペルーのチクラヨ司教に任命され、ヴァチカン司教省のラテンアメリカのトップという高い役職に就き、大司教を経て2023年9月、教皇フランシスコによって枢機卿に任命されることに。

「ただ、アメリカはカトリック(約25%)よりもプロテスタント(約50%)の方が人口比率が高く、長年にわたりカトリックに対する差別の歴史が繰り返されてきた。そのため、今回コンクラーベに参加した枢機卿の8割が教皇フランシスコによって任命された人々であったにしても、さすがにアメリカ人を教皇に選ぶことはあり得ないだろうとの見方が強かった。人選は相当難航するのではないかと思われていただけに、2日目という早いタイミングで決まったことに、世界中から集まった信者も驚愕していたようです」(同)

 レオ14世は前任のフランシスコ教皇同様、移民や貧困、環境について、似通った見解をもっているとされる。

「フランシスコ教皇は自伝に『教会はあらゆる信者を歓迎する。離婚した人も、同性愛の人も、トランスジェンダーの人も含めて』と記すなど、そのリベラルな姿勢が多くの人々に支持されてきました。同時にウクライナ戦争やイスラエルによるガザ侵攻についても、繰り返し平和的解決を呼びかけてきた。そういう意味では、トランプ米大統領の姿勢には批判的な立場をとってきたことになります。アメリカの教会指導部は保守寄りで共和党と友好関係にありますが、今回選任されたレオ14世もフランシスコ教皇の遺志を受け継ぐことになるわけですからね。当然、アメリカの教会指導部に対し遠慮することもなくなるでしょうから、移民の排除問題などを巡り、反トランプ的な言動が広がる可能性も否定できません」(同)

 トランプ氏は8日、「アメリカ出身の教皇が誕生し光栄だ」と手放しでう喜びを伝えているが、新教皇の言動を世界の約14億人カトリック教徒が注視している。

「なぜ、ヴァチカンがあえてアメリカ出身者を新教皇の座に据えたかはわかりませんが、あるいはヴァチカンの中にも、国際情勢を不安定化させているトランプ氏に対し、物が言えるようにしたい、つまり『トランプ対策』という側面があったのかもしれません。ローマ教皇が持つ世界に対する影響力は想像以上に大きい。今後、その存在がトランプ氏の前に大きく立ちはだかるかもしれませんね」(同)

 はたして、新教皇は暴走するトランプ氏にブレーキを踏ませることができるのか。新教皇の言動から目が離せなくなりそうだ。

(灯倫太郎)

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