石破総理が期待を寄せるも課題多し…高速鉄道ならぬ「中速鉄道」とは?

 発足から半年を迎えた石破内閣だが、各世論調査の支持率は20~30%台の危険水位のまま。しかも、総理の商品券問題でさらに落ち込みそうな状況となっている。

 国民からの反応も冷ややかだが、そんな石破総理は大の鉄道マニアとしても有名。2月に行われた衆議院予算委員会の集中審議では、政府の「中速鉄道」に対する考えを聞かれ、このときの答弁が鉄道ファンの間で話題となった。

 この質問に総理は、「人口が減り、設備は老朽化する時代にあって、中速鉄道の可能性を考えなければならないのは、曽根先生の指摘通りだ。ヨーロッパでは中速運転の鉄道が航空機やマイカーからのモーダルシフトにつながっている」と述べている。

 ちなみに答弁の中に出てきた曽根先生とは、「中速鉄道のすゝめ」(成山堂書店)などの著書がある交通システム工学が専門の曽根悟東京大学名誉教授。

 高速鉄道が200キロ以上で走行可能なのに対し、中速鉄道は160キロでの走行に耐えうる車両、設備を有する鉄道のことを指す。新幹線で言うと、“ミニ新幹線”と呼ばれる在来線区間を走行する福島―新庄間の山形新幹線、盛岡―秋田間の秋田新幹線がこれに当たる。

 ただし、この速度域での営業運転はまだ行われておらず、他の在来線にしても同様だ。

「中速鉄道であれば、かかるコストは高速鉄道の半分か、それ以下に抑えることができ、費用面で大きなメリットがあります。ヨーロッパで普及した要因のひとつであり、欧州横断輸送網(TEN-T)は2040年までに160キロ走行への対応を義務化しています」(交通インフラ問題に詳しい全国紙記者)

 日本の整備新幹線計画は、北海道新幹線の新函館北斗―札幌、北陸新幹線の敦賀―新大阪、西九州新幹線の武雄温泉―新鳥栖の延伸開業でひと区切りとされている。だが、全国新幹線鉄道整備法では、これとは別に四国新幹線や山陰新幹線など11路線が存在する。

「こちらは調査や話し合いなどは行われていますが、構想止まりの段階です。いくら高速鉄道よりコストが抑えられるといっても莫大な費用がかかるのは事実。クリアすべき問題は山積みで、現状だとハードルはかなり高いと言わざるを得ません」(同)

 中速鉄道の普及で移動が便利になるのはいいが、やっぱり採算に見合わないでは困る。こちらに関しては引き続き議論を重ねていく必要がありそうだ。

※画像は“中速鉄道”として在来線区間を走る秋田新幹線

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