トランプが絶大な信頼を置くウィトコフ特使がウクライナ和平交渉で「ロシア寄り」の不気味

 トランプ米大統領の仲介により停戦協議の準備が進められる現在もなお、ロシアによるウクライナへの大規模な無人機攻撃が続いている。

 そんな中、トランプ氏から両国仲介のための「特使」として任命されているスティーブン・ウィトコフ氏の「ロシア寄り」ともとれる言動が物議を呼んでいる。

 トランプ氏同様、不動産王として知られるウィトコフ氏は、莫大な資金力をバックに政界・財界で大きな存在感を示してきた。だが、むろん外交の世界ではまったくの素人。そんな同氏をトランプ氏が中東担当特使に任命したのは、当選からわずか1週間目のことだった。ところが驚くことなかれ、トランプ氏にも劣らぬディールで、イスラエルとハマス武装組織との間のガザ地区停戦交渉において重要な役割を果たし、注目を浴びることに。

「この結果を受け、トランプもホワイトハウスで行った記者会見で最大の賛辞を送っています。当然のことながら、ウィトコフの政権内における役割は急拡大。そして2月11日にはウクライナ問題の特使として、ロシアのプーチン大統領と3時間半にわたり会談することになったというわけです」(国際部記者)

 ところが、その席で、あるいはその後、プーチン氏との間でどんなやり取りがあったのかは不明だが、ウィトコフ氏の発言にロシア寄りと思える言葉が目立つようになってきたのである。

「今後の停戦に向けた協議では、当然、ウクライナの領土の一体性や安全の保証といった根本課題がどのように扱われるかが最大の争点。しかしウィトコフは21日のインタビューで、ロシアが事実上支配している地域について、『圧倒的多数の人々がロシアの統治下に入りたいと意思表示した。今後の焦点は世界がこれらの地域をロシアの領土として認めるかどうかだ』などと、完全にロシア寄りの見解を述べている。確かに3年前、ウクライナ東部と南部4州では『住民投票』で併合が宣言されましたが、これがプーチン政権による強制的かつ、一方的な併合だったことは今さら説明するまでもないこと」(同)

 さらに同氏は、「ウクライナは和平合意が実現すれば、NATO(北大西洋条約機構)のメンバーにはなれないことをほぼ受け入れていると思う、ゼレンスキー大統領と彼の右腕、イェルマーク大統領府長官もほぼ認めたと思う」といった持論を展開。この発言が今後、和平交渉にどのような影響を与えるが大いに注目されているのである。

 高級不動産を扱うウィトコフ・グループを率い巨万の富を手にしてきた同氏は、経歴や思考などを含め、その世界観はおそらくトランプ氏がディール(取引)を重視するそれと一致するはず。となれば同氏が、このとてつもなく重要かつ大きな外交を、今後自身のビジネスとどう結び付けていくかについて知恵を巡らせているとしても不思議ではない。

「ガザでの活躍を受け、欧州当局者の中にはトランプに関する見解を、事前にウィトコフに求めるようになった者も出てきたとの話もある。同氏がルビオ氏を押しのけ、外交の主導権を握る日も近いかもしれませんね」(同)

 権力闘争と金儲けの狭間で見え隠れする、それぞれの思惑。翻弄され続けるウクライナはいったい、どこへ向かっていくのだろうか。

(灯倫太郎)

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