「ホンダ・日産経営統合」に話題を奪われたキオクシアHD上場“高揚感のない背景”

 半導体メモリー大手のキオクシアHDが12月18日に上場。新規上場(IPO)では東京メトロが10月23日に上場し、終値で時価総額1兆103億円と2018年のソフトバンク以来の大型上場となったが、キオクシアの上場はそれに並ぶ今年の大型と言われたものの、少々渋いスタートとなった。

「まず初値が公開価格の1455円を下回る1440円でのスタートでしたからね。その後、割安感からか買いが盛り返して一時は1689円まで上昇する場面もあり、終値は1601円の時価総額約8630億円で何とか落ち着きました。想定していた7500億円を上回ったので、関係者は御の字といったところでは」(経済ジャーナリスト)

 ただ、同社に対する市場の反応からは、新しい船出に伴う高揚感といったものは感じられない。というのも同社の場合、過去2度にわたって上場を延期した経緯があり、どこか行き遅れ感が伴うからだ。

「20年と今年10月に上場を延期し、特に20年ではIPO時の時価総額で3.5兆円が見込まれるとの見方があっただけに、見劣りせざるを得ないわけです。しかも悪いことに、18日は日産とホンダの経営統合話が持ち上がっていることが伝えられ、経済ニュースでは完全にこちらに話題を持って行かれた。運や市況に恵まれないとイメージされても仕方がないでしょう」(同)

 キオクシアはもともとは東芝の子会社で、東芝が米原発大手のウエスチングハウス(WH)買収で大コケしてから、米投資ファンドのベインキャピタルや韓国の半導体製造会社のSKハイニックスの下で会社再生を図ってきたところだ。となると、少しでも安値で仕入れて企業再生し、高値で上場させるのがベインキャピタルの狙いだった。ところが、かつての3.5兆円には戻ることはなく、ベインとしては損切りのような形での今回の上場だった…というのが、そもそもの背景だ。

 その後は一時1900円を超えるまでに伸長する場面もあり落ち着いたが、ファンドが再生案件で上場させた場合、大概は高値がつくのが慣例。それなりに健闘しているといったところだろうか。

(猫間滋)

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