通信社ロイターが「中国系通販サイト、年末商戦で玩具を強化 偽物の懸念も」というタイトルを打ち、急成長する中国発ECの動きを伝えた。具体的に言えば「SHEIN(シーイン)」と「Temu(テム)」が年末のクリスマス商戦で激安のおもちゃを大量に売り捌こうとしていることに対し、米規制当局や流通、おもちゃメーカーから偽造品の懸念が広がっているということらしい。
「シーインは中国のZARAなどと呼ばれ、世界200カ国以上でファストファッションの通販を展開する最大手。日本では20年12月にサイトが開設されています。品質はともかく、とにかく安いので若者の間で広く浸透。インフルエンサーをうまく利用することで、アメリカでもZ世代を中心にすぐに人気に火がつきました。ところが、そこはやはり中国系メーカー。パクリ問題が後を絶たず、ドクターマーチンやラルフローレン、ステューシー、ユニクロなど多数のメーカーから、知的財産権や商標権の侵害で提訴されています。テムもシーインと同様、多くのパクリ訴訟を抱えていますが、シーインとテム同士も著作権侵害などで訴訟合戦となっているのです」(経済ジャーナリスト)
また、米政府が両社のベビー用品の安全性に問題があるとして調査したり、両社が活用している小口貨物の免税措置を見直す動きも始まっている。
「アメリカに輸入される商品の正規小売価格が800ドル以下の場合、いちいち関税をかけるより税を免除した方が安上がりという『デミニミス免除』という規則があるのですが、そのほとんどの恩恵を受けているのは中国系ECということで、米政府は今年中に法改正する予定です。両社が激安価格をつけられるのは、そうした免税措置のほか、『ギグワーカー』と呼ばれる中国国内の低賃金労働者を大量に雇って働かせているためで、テムでは朝の9時出社・夜の9時退勤・週6日就労の『996工作制』で社員が働かされているとの批判があります」(同)
一方、迎え撃つ通販最大手のアマゾンは11月から「Amazon Haul」という全商品20ドル以下という激安アウトレットサイトを始めたが、もちろんシーインとテムから客を取り戻すためで、ここでも米中経済戦争が展開されている。
半導体や資源の問題に比べて、国際的に問題視されることの少ない小売りでの米中対立。「トランプ2.0」スタート前の駆け込みとなる年末商戦で、大激突ということになるだろう。
(猫間滋)