寒い屋外と暖かい室内との温度差が大きくなる冬は、どうしても血管に負担がかかりやすくなる季節。そのため脳卒中や心筋梗塞なども増加する。また、目の奥にある網膜を通る動脈や静脈も温度差により影響を受け、眼病が発生しやすくなる。なかでも、夏に比べ眼圧が高くなりやすいこの時期は、緑内障のリスクが高くなる季節ともいわれる。
通常、私たちの眼の中では、房水の産生と排出のバランスが一定に保たれている。ところが、そのバランスが何らかの原因で崩されると眼圧が高くなる。眼圧が高くなると、目で見た情報を脳へと伝える神経、つまり視神経が圧迫を受け、障害を起こす。この圧迫によって視神経がダメージを受け、視野が狭くなる症状が緑内障と呼ばれる疾患だ。
日本における緑内障患者は現在、40歳以上で5%。60歳以上では1割以上とされ、残念ながら日本の失明原因一位を占めている。そのため、早期に発見して適切に治療を受けることが大切になる。
しかし緑内障には、突然の眼圧上昇で目の痛みや頭痛、吐き気が現れる落屑緑内障や血管新生緑内障など一部特殊なものを除き、通常は自覚症状がほとんどない。そのため、眼に違和感を感じても放置してしまい症状が悪化する場合が多い。最近やたらとまぶしさを感じるようになった、視力が低下したような気がする、あるいは目の奥にときどき痛みを感じるなど、少しでも異常を感じたら、まずはできるだけ早く眼科医に相談すること。特に眼圧が上がりやい冬場は、定期診察を受けることをお勧めしたい。
緑内障には自覚症状はない、と書いたが、視神経の障害により視野の周辺が狭くなるため、まぶしさを感じる、あるいは暗い場所での視力が低下することがある。なので、これらの症状は一つの大きな目安となるはずだ。
緑内障であるかどうかは、眼圧検査のほか、特殊な顕微鏡やレンズを用いた隅角検査、眼底の視神経や網膜を観察する眼底検査、さらに眼の内部構造を詳細に分析する画像解析検査などで判断するが、現代の医療では根治させることができないため、眼圧降下薬の使用などで眼圧をコントロールし、緑内障の進行を遅らせることになる。
なお、眼圧が高くなる原因については、ストレスや高血圧や糖尿病、メタボなどの生活習慣病が大きくかかわっているとされ、近年の研究では、スマホやパソコンの長時間使用が眼圧上昇の大きな要因であることが明らかになっている。できるだけ時間を区切るなどして長時間連続した使用を避け、仕事などで使用する場合でも最低1時間は休息をとり、眼圧を上げないよう意識することだ。
緑内障は病気がかなり進行した状態でないと自覚症状は見られず、進行した視力異常は回復することができない。ただ、薬によって視力異常の進行を遅らせることは可能なので、早期発見、早期治療がカギになる。特に40歳以上で血縁家族に緑内障の人がいる場合はリスクが高いため、受診の際にはきちんと「緑内障を心配しているため検査を受けたい」と伝えること。眼圧が高くなりやすい冬場だからこそ、早めの受診をおすすめしたい。
(健康ライター・浅野祐一)