いよいよアメリカ大統領選の審判が下される時がやって来た。直近に行われた米世論調査でも、とりわけ選挙全体を左右するとされた激戦7州でのハリス―トランプ両陣営の支持率の差は誤差の範囲内に留まったままで、全く予測不可能な状況だ。
だが、そんな状況が深まれば深まるほど、民主党・ハリス陣営にとっては、「勝っても負けてもロクなことになりはしないだろうか」という独特のジレンマにも同時にハマり込んでいるという。
「まず負けた場合は、そもそも負けなので受け入れ難い。加えて、『とにかくトランプだけには勝たせたくない』という有権者は多いので、そのトランプ氏が大統領になることで、どのみちアメリカの分断状況は続きます。そして勝った場合。こちらはもっと厄介で、トランプ氏が前回の選挙同様、選挙での負けを認めるということは考えられず、となると21年1月に起きた国会議事堂襲撃事件の悪夢が思い出されます」(全国紙記者)
また前述のように僅差での接戦は避けられないことから票の集計で時間がかかると見られ、その間の緊張感はハンパではなく、何が起こるか誰にも分からない状況が続く。
「米大統領選では票差がわずかだった場合、州ごとに再集計する制度がある。例えば0.5ポイント差以内だと東部ペンシルベニアと西部のアリゾナ州で、中西部のミシガン州は2000票以内の差だと再集計が行われ、時間がかかります。これら3州はいずれも激戦7州に含まれ、ペンシルベニアとミシガンはその中でも激戦とされる3州に含まれる。経過の段階で揉めないわけがないと見られているわけです」(同)
20年の大統領選時には11月5日から開票が始まった後に法廷闘争にもなり、最終的に決着したのは投開票日から36日後だった。すでにペンシルべニアでは有権者登録で不正行為の疑いが調査され、トランプ氏は自身のSNSで「大規模な不正の情報を得た。刑事訴追しなければならない」と煽りまくっている。
アメリカにとって11月5日は、評決の日ではなく悪夢の始まりになるかもしれない。
(猫間滋)