佐藤優「ニッポン有事!」第三次世界大戦「前夜」に動く創価学会とカトリックの一致

 国際情勢が緊張を増している。7月21日にアメリカのバイデン大統領(民主党)は、11月の大統領選挙戦から撤退すると表明した。これで共和党のトランプ候補(前大統領)が当選する可能性が高くなった。トランプ氏になれば、アメリカのウクライナ支援は現在よりも遙かに消極的になる。

 この情勢を見据え、ロシアは軍事攻勢を強めるであろう。ガザ紛争は、レバノンやイエメンにも拡大している。国際的にイスラエルは孤立を強めている。レバノンに拠点をもつイスラム教シーア派武装集団ヒズボラが、イスラエル領内に侵攻する事態になれば全面戦争になる。ウクライナ戦争もガザ紛争も第三次世界大戦を引き起こしかねない。

 日本の政治家も官僚も学者も、歴史的に「新しい戦前」というべき状況に立っていることを肌感覚で理解していない。「戦前」が「戦中」に進んでいくことを、いかなる対価を支払っても阻止しなくてはならない。この認識を持っているのが創価学会だ。

 6月29日、巣鴨の東京戸田記念講堂で創価学会第3回本部幹部会が行われた。席上、原田稔・創価学会会長が、今年5月10日、バチカンで行われたローマ教皇(カトリック教会の最高指導者)との会見についてこう述べた。

〈この5月、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇と会見をしてまいりました。語らいは約30分に及びましたが、なかでも、核兵器廃絶に向けた創価学会の半世紀以上にわたる取り組みに対して、教皇は強い言葉で核兵器を批判するとともに、「素晴らしい。私も同意します」と語られました。

 また、小説『人間革命』の冒頭の一節「戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない」を通して、学会はこの精神を根本として平和運動を展開していると語ると、教皇は「大切なことです。賛同します。私も同じ意見です」と述べるなど、平和への信念において深い一致を見たことは、大きな歴史的意義があると確信します。

 と申しますのも、すでに1975年、池田先生はバチカンでローマ教皇と会見することが決まっていました。かねて世界平和に向けた宗教間対話を志向されていた先生は、その8年も前からバチカン市国駐日大使らローマ教皇庁の関係者と対話を重ね、その流れのなかで教皇との会見を勧められ、ローマ教皇庁から正式な招待を受けられていたのです。

 しかし、出発の直前になって、教条的・独善的な宗門からの横やりによって、中止せざるをえなくなってしまいました。〉(7月6日「聖教新聞」)

 池田大作創価学会第三代会長は、1970年代半ばの時点において世界平和のために創価学会とカトリック教会が協力していくことが重要と考えていた。しかし、当時の創価学会は日蓮正宗(宗門)の信徒団体だったので、キリスト教を邪教として排斥する宗門の妨害で、池田氏と教皇の会見が実現できなかったのだ。原田会長は師匠である池田氏の想いを今回実現したのだ。

佐藤優(さとう・まさる)著書に『外務省ハレンチ物語』『私の「情報分析術」超入門』『第3次世界大戦の罠』(山内昌之氏共著)他多数。『ウクライナ「情報」戦争 ロシア発のシグナルはなぜ見落とされるのか』が絶賛発売中。

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