【米大統領選】第三次世界大戦を孕む“ハリス氏勝利”“トランプ氏再選”それぞれのシナリオ

 米大統領選まで3カ月となったが、最近はトランプ氏の銃撃事件、バイデン大統領の選挙戦からの撤退、後継候補ハリス氏の台頭などが相次いで起こっている。

 トランプ陣営からすればバイデン大統領が選挙戦を続ける方が明らかに有利だったが、今後はハリス氏との戦いを先鋭化させることになる。仮にハリス氏が勝利すれば、基本的にはバイデン政権の政策を継承することになるので、世界情勢は現状維持といったところだろうが、トランプ氏が勝利すれば世界は大きく変化することになる。

 その最大の変化を余儀なくされるのが、欧州だ。トランプ氏はバイデン政権と同じく中国には強硬姿勢を貫き、安倍・トランプ時代の良好な関係を継続させ日本との関係を重視してくるだろうが、ウクライナは窮地に立たされる恐れがある。

 これまでウクライナはバイデン政権下の米国から多額の軍事支援を受け、これがロシアの進軍を抑える上で決定的な役割を担ってきた。バイデン政権はウクライナ戦争を民主主義と権威主義の戦争と位置付けており、概念的には自らも当事者という意識でウクライナを背後からサポートしてきた。

 しかし、トランプ氏はディール外交(何かをすれば相手から何かをもらう)に撤し、ウクライナから軍事支援の見返りに何も貰っていないという認識のもと、“大統領に返り咲けばウクライナ支援を停止”“24時間以内に戦争を終わらせる”などと主張している。実際にトランプ政権の再来が訪れなければ分からない部分もあるが、ウクライナ支援は縮小、停止の方向へ進む可能性が高いと同時に、トランプ氏はゼレンスキー大統領に停戦に応じるよう圧力をかけてくるだろう。トランプ氏はNATOを軽視する発言も続けており、欧州との間には大きな分断が生じることは避けられない。

 そして、そうなればウクライナ周辺の国々を中心にロシアへの警戒が強まり、フランスやドイツ、英国などの主要国を中心に“欧州の安全は欧州自身で守る”との意識が広がり、ロシアとの軍事的緊張が強まっていくことになろう。ロシアが警戒するのは、米国がどう対応するかの一点であり、その米国が欧州の安全保障に興味がない、関与しないという姿勢を鮮明にすれば、それだけプーチン大統領の軍事的ハードルは下がることになる。トランプ再選によってウクライナは窮地に追いやられ、それによって欧州が対ロシアで一致団結、ロシアとの間で第三次世界大戦が勃発することは決してフィクションではない。

(北島豊)

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