NBAもプレミアリーグも爆買い!世界のスポーツに浸透する中国資本の弊害

 八村塁がNBAドラフト1巡目指名を受けたことで話題になることが多くなったバスケットボール。10月8日と10日には、プレシーズンマッチながら16年ぶりのNBA日本開催とあってさらに熱を帯びていたが、思わぬところで波紋を広げることとなった。

 プレシーズンマッチで日本に来日していたヒューストン・ロケッツのダリル・モーリーGMが10月4日に香港のデモを擁護する発言をしたところ、中国バスケットボール協会がロケッツとの提携の打ち切りを発表。さらに、中国資本のスポンサー企業であるスポーツアパレルの「Li-Ning(李寧)」もロケッツとの関係を中止すると発表したのだ。

 思わぬ反応にモーリーGMはツイッターを削除、弁明をしたものの、いったん着いてしまった火はおさまらず、NBAサイドも「不適切なコメント」とし、一定の距離を置いた。

 ところがこれがまた新たな火種となった。NBAのこの態度に、アメリカの共和党、民主党両党の複数の議員から「恥ずべきこと」と批判の声が上がり、NBAの中国資本への日和見主義が問題視されたのだ。

 背景は少し複雑だ。当のロケッツでは、中国バスケ界の英雄である姚明(ヤオ・ミン)がプレーしていたこともあり、中国での認知が非常に高い。また、中国はとてもバスケ人気が高く、だからヤオがNBA入りした2000年代頭からNBAは中国市場を積極的に開拓してきたという背景がある。結局は、カネと政治が絡んでどちらかに偏った両派が対立するという、ありがちな光景が繰り広げられているのだ。

 スポーツと政治とカネという、よくあるテーマの議論がここでも繰り返されているわけだが、今回の“兵糧攻め”とも言える事態は逆に、スポーツの世界でも中国資本がワールドワイドで浸透していることを知らしめられる結果ともなった。

 例えばサッカーの母国イングランドでは、同国のサッカーリーグであるプレミアリーグのクラブチーム(2部以下含め)で中国資本への身売りが続発してここ数年話題となっている。その波は、バルセロナやレアルマドリードで有名なスペイン・サッカー界にも広がり、中国資本がスポーツ界を席巻しかけている。確かにどんなスポーツでも、競技場に掲げられるスポンサー企業の広告にはよく知らない漢字の企業を見ないことはない。簡単に言えば、ここでも爆買いしているのだから。

 この辺りの事情を中国に詳しいジャーナリストはこう解説する。

「中国においてスポーツは国策です。それは昔からですが、現在は前のめりになって強化策を打ち出していて、2025年までには中国のGDPの1%に当たる80兆円もの予算が投下されると見られていて、投資というより投機に近いマネーが入ってくるわけですから、スポーツ界も中国に買われているという現状は否めません」

 先ごろ、野球の高校代表が日の丸を外したポロシャツを着て韓国入りしたことが物議を醸したが、そんな議論はかわいいものに思えてくる。

(猫間滋)

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