ハリス氏とトランプ氏とでオイシイのは…「プーチン大統領視点」の米大統領選

 米大統領選まで残り3カ月となり、民主党はハリス副大統領を正式に指名。今後、トランプ氏との戦いが白熱化していくだろう。最新の世論調査では、ハリス氏が黒人やアジア系、無党派層からの支持を獲得し、トランプ氏が劣勢にあるとの声も聞かれる。一方、米大統領選の結果によって世界情勢は大きく変動することから、各国の指導者たちはその行方を注視している。

 では、ロシアのプーチン大統領はどちらの勝利を望んでいるのだろうか。先に結論となるが、プーチン氏にとってはトランプ氏勝利が望ましい。トランプ氏は、大統領に返り咲けばウクライナ支援を最優先で停止する、戦争を24時間以内に終わらせるなどと主張しているからだ。バイデン政権が積極的に進めてきた軍事支援には懐疑的であり、ロシア軍がウクライナ領土の一部を実行支配する現状での終戦をゼレンスキー大統領に持ち掛ける可能性がある。現状での和平案はウクライナにとっては屈辱的なものであるが、プーチン氏にとっては極めて都合がいい。

 プーチン氏がウクライナへ侵攻した理由の1つに、NATOの東方拡大、ウクライナのNATOへの接近がある。プーチン氏は長年、NATOがバルト3国など旧ソ連圏に拡大することに強い不満を抱いてきたが、ウクライナが加盟すればNATO勢力圏がロシア国境にまで拡大することになり、これを何としても防止する必要があった。

 対してトランプ氏は、欧州の加盟国が防衛費を十分に払わないなら助けないなどと発言するなど、NATOを軽視する姿勢を示している。欧米陣営の中で亀裂が深まり、NATOの形骸化が進むことをプーチン氏は望んでいる。

 そしてトランプ政権となれば、プーチン氏の方から接近する可能性も考えられよう。米国の利益にならない紛争には介入せず、アメリカファーストに撤するトランプ氏との相性は決して悪いわけではなく、戦略的に関係強化を狙ってくるシナリオも十分に考えられる。

 一方、ハリス氏が勝利すれば、ウクライナへの継続的な支援を訴えてくる可能性が高いことから、プーチン氏にとってトランプ勝利はウクライナ戦争を有利な形で進めていく上で絶好のチャンスなのである。

(北島豊)

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