石丸伸二氏「論破バトル」の勝敗を完全ジャッジ(3)著書は単なる自己啓発本だ

 全国紙記者は石丸人気をこう解説する。

「都知事選で石丸フィーバーを支えたのは、圧倒的に10代~30代の若い世代でした。京大卒業後は大手銀行に就職するなどエリート街道を歩んだ経歴と政治家らしからぬ淡泊な見た目に感激し、石丸推しの主婦まで出た。都知事選での躍進は旧態依然とした古い政治家に不満を持つ層が、『政治屋の一掃』を訴える石丸氏なら、中身はどうあれ何か変えてくれそうと期待を膨らませたからでしょう」

 ここでネットで拡散された「石丸構文」によるハンバーガー注文問答を一例に挙げよう。

客「ビッグマックで」

店員「セットにされます?」

客「私セットの話しました?」

店員「セットにされた方がお得です」

客「私ビッグマックって言いましたよね‥‥」

 結果、ビッグマックは注文できないわけで‥‥。

 見た目も経歴も真面目そうながら、重箱の隅をつつくような屁理屈だけはエンドレス。まさに慇懃無礼そのものの石丸批判の急先鋒に立つのが、作家の古谷経衡氏(41)だ。

「彼がどういった人物なのかを知るには、彼の著作を読むのが一番と、5月に刊行された『覚悟の論理』と都知事選直後の7月10日に刊行された『シン・日本列島改造論』の2冊を読んでみました。すると前者はわずか15分で読めてしまう、中身が何もない自己啓発本。後者は都知事選に出る前提で、さすがに安芸高田市で行ってきたことが書いてあったのでまだ読める内容になっていますが、それでも18分で読めてしまうようなものでした」

 その上で奇妙な事実にぶつかったという。

「不思議なことに、小学生時代のことは書いてあるんですが、人格形成で重要な時期であるはずの高校・大学時代や、本来は肝心なはずの三菱UFJ銀行でのニューヨーク駐在時代のことが書かれていない。私はこのことについて、彼が不遇をかこっていたために、書かないんじゃなくて書けないのだと見ています。女性に対しての発言もその裏返しなのでしょう。都知事選で人々の注目を浴び、41歳にしてようやく自己肯定感の喜びを味わった。そのことが隠しきれない傲慢さとなって、表に表れているのだと思います」

 このコンプレックスこそ「石丸構文」として表に出てきたものなのだろうか。

 最後に、古谷氏はこう警鐘を鳴らす。

「石丸氏は言っていることに中身がなく、考え方も薄っぺらい。ところが大量の動画と結びついて、多数の支持を得てしまった。石丸氏の躍進は若者からの得票とされますが、出口調査などから見ると、実は30~50代からの投票が多い。石丸構文だかに踊らされた“いい大人”が政治を付託する。その現在の日本が抱える幼稚さに恐怖を覚えます」

 何か言っているようで何も言っていない「石丸構文」と、何かと対比されるのが小泉進次郎元環境相(43)。地球温暖化に関し、

「今のままではいけない。だからこそ日本は今のままではいけない」

 人をイラつかせるだけの石丸構文より、かろうじて笑える進次郎に軍配か!?

*週刊アサヒ芸能8月8日号掲載

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