御年67にして、いまだ現役バリバリの笑福亭鶴瓶。キャリア40年超えの落語家で、上方落語協会の相談役でもある。師匠・笑福亭松鶴の墓参りに月1ペースで行き、師匠の旧自邸を買取・改築して、大阪・帝塚山に純和風ホール「帝塚山 無学の会」を運営している。毎月1度、秘密のゲストを招いて行うトークイベントは240回を超える。
そんな生き方にあこがれる芸人は少なくないが、鶴瓶のおかげで文字通りタレント生命を救われたのがお笑い芸人の千原ジュニアだ。
「ジュニアさんが全国区に躍り出る前の2001年、バイク事故で大けがをしたのは有名な話ですが、そのケガは鼻、顎、左頬と前頭骨、眼窩底と内壁をすべて骨折という凄絶なもの。死の淵をさまよった末に奇跡的に一命は取りとめたものの、術後の顔はグッチャグチャ。もう表に出られないと思い、放送作家に転身しようと決心したそうです。そんなとき、病院に先輩の東野幸治さんから1本のビデオテープが届けられました」(芸能ライター)
そのビデオは00年3月に放映された「LIVE PAPEPO 鶴+龍」(読売テレビ)の最終回のマスターテープ。同番組は、鶴瓶と00年に芸能界を引退した上岡龍太郎による「鶴瓶上岡パペポTV」(読売テレビ)の後番組。上岡が芸能界から身を引いたことで、業界視聴率№1といわれた同番組は惜しまれながら終了した。
その最後の収録には島田紳助、明石家さんま、村上ショージ、間寛平が応援に駆けつけ、3時間ほどのマシンガントークを展開。文字どおり有終の美を飾った。
「90年代の鶴瓶&上岡は、しゃべりだけで西は大阪城ホール、東は日本武道館を満員にした黄金コンビ。そのトークスキルは後輩芸人にとってあこがれでした。そんな2人に紳助&さんまが加わったノーカット版テープが芸人の間に出回り、東野さんや今田耕治さんも入手。東野さんは、人生の岐路に立っていたジュニアさんにお見舞いとして渡すと、彼は入院後初めて心の底から爆笑し、もう一度笑いの舞台に立ちたいと思ったそうです」(前出・芸能ライター)
絶望の淵に立っていたジュニアを立ち直らせた1本のビデオ。こうして鶴瓶はジュニアの恩人となった。
(北村ともこ)