最下位に沈んだ東京ヤクルトスワローズは、小川淳司監督、宮本慎也ヘッドコーチの退団を発表、高津臣吾二軍監督を昇格させることで内定している。
日本、メジャーリーグ、韓国、台湾、独立リーグと幅広い経験を持つ新監督にチーム再建が託されたわけだが、肝心の組閣についてはいまだ情報が洩れてこない。
「高津体制をサポートするコーチ人事が完全に固まっていないのも、理由の一つでしょう。高津新監督の希望も聞き入れられるようですが、そうなると90年代の野村ID野球で鍛えられた面々で固めることになりそうです」(ベテラン記者)
指導者になるときは、現役時代に影響を受けた監督の方法論に寄るのが一般的。となれば、高津新監督の野球は野村ID野球が基礎となりそうだが、いまのヤクルトにはIDノートがないという。
「野村克也氏のミーティングは、ヤクルト時代は大学の講義そのもの。ホワイトボードに監督が書き、しゃべった内容を選手がノートに書き写していました。阪神の監督だったころは『書くスピードが追いつかない』と選手から苦情が出て、職員が作成したプリントを配ったりもした。それが楽天監督時代は、プリントとスライドを使って説明することもあったようです」(球界関係者)
”ノートのみ”だったヤクルトでは、野村IDメモは選手の個人財産となってしまった。9年間の野村政権全てを知る選手は少なく、せっかくとったノートも「どこに仕舞ったのか忘れちゃった」というケースも。高津新監督も91年入団なので完全版は持っていない。
つまり、野村IDのすべてを知るには、野村監督の薫陶を受け続けてきた古田敦也氏らOBに力を借りなければならない。が、古田氏の力を借りるのは、球団としてはあまり歓迎しないという。
「2006〜2007年に兼任監督も務めた古田氏は、IT企業経営者らを外部から招聘し、球団改革やファンサービスに努めました。しかし、球団への要求が行き過ぎたのか、今も古田氏を敬遠する球団関係者は少なくありません。高津氏が監督に昇格すれば、当時のチームメイト、もちろん古田氏もグラウンドに顔を出すようになるでしょうから、それを面白くないと思う人もいるでしょう」(同前)
新体制の発表が遅れているのは、IDノートと「OBたちとの距離感」にもあるようだ。
(スポーツライター・飯山満)