「反万博」を唱えマッパ踊りも!東京都知事選の「傑物候補」列伝

 小池百合子東京都知事が6月12日、3期目の続投を期して立候補を表明。これで「小池vs蓮舫」で与野党対立の構図が出来上がったが、今回は約50人が立候補の意向を示しているということで、48人分しかないポスター掲示板の枠が足りなくなるのでは、などといった報道もなされている。

 都知事選立候補者数の過去最多は前回(20年)の22人。前々回(16年)も21人と3回連続で20人超えとなる。ちなみに過去最少は石原慎太郎氏が300万票を集めて圧勝した03年の5人だ。

 また、都知事選はかねてよりバラエティーに富んだ候補者が乱立することで知られている。内田裕也氏、桜金造氏らのタレント候補、ドクター中松氏、マック赤坂氏、羽柴誠三秀吉氏らの有名人、最近では後藤輝樹氏、西本誠(スーパークレイジー君)氏などが若い人の間でお馴染みだろう。

 およそ当選は望めないが、それでも出馬する候補をかつては「泡沫候補」と呼んだが、蔑称に当たるからだろうか、最近は「独立系」「インディーズ」などと称されることが多いようだ。一方、「アート」の実践として立った人もいた。75年と79年に出馬した秋山祐徳太子氏だ。

「秋山氏はもともと前衛芸術家として有名だった人物。通常なら芸術とは思えないパフォーミングアートを続々と繰り出し、アート集団『ゼロ次元』の活動を通じて70年の大阪万博前年の69年には、『反万博』を唱えて集団でマッパの踊りを野外で繰り返したこともあります。その秋山氏は自ら『泡沫』であることに意味を見出しており、今の言葉で言う『芳しい』人々を多数取り上げた『泡沫桀人列伝』という著書も残しています」(ベテラン週刊誌記者)

 首都のトップを決める選挙戦を、非目的なパフォーマンスの場とするというのだから、もうそうなると「アート」という言葉でくくるしかないだろう。そして秋山氏が泡沫の先達として言及しているのが、肥後亨という人物なのだが、その“愉快犯”ぶりは実に驚くものなのだ。

「若いころに鳩山一郎の書生を経て、政治家秘書などを務めたこともあるそうですが、ユニオンジャックの上に排泄して駐日英国大使館に送り付けるなど、反米英思想の広い意味での右翼系人物。50~60年代に各地の首長選、衆院選、参院選に次々に出馬して世間の顰蹙を買いましたが、63年の都知事選では自ら率いる団体から2人を立候補させ、所属党派を『肥後亨』とするなど、とにかく破天荒。63年の衆院選では、東京と千葉で27人の候補を立て、候補者名を一郎、二郎から始めて最後は二十六、二十七を名乗る『背番号候補』にするなど、気合の入り方が桁違いだったようです」(同)

 ところで東京都知事選は、出るのはいいが供託金300万円を積まねばならず、得票が有効投票総数の1割に達しなかった場合は全額没収される。今回は候補者乱立で、没収額の合計が1億円を超えるのではとも言われている。秋山氏が出馬した75年の供託金は30万円だったが、アートの場にした故か、次回の79年の都知事選では100万円に跳ね上がったという。
 
(猫間滋)

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