米中対立が激化し、経済不振で国民の不満が膨らむ中、習政権は国内での監視の目をいっそう強化する構えだ。中国では7月1日より、個人のスマートフォンやPCを強制的に検査できる権限が監視当局に付与される。
習政権は国内での監視を強化する狙いで、2014年の反スパイ法、2015年の国家安全法、2017年の国家情報法、2020年の香港国家安全維持法、そして昨年7月の改正反スパイ法と、次々に国内での統制と監視を強化しており、今回のスマホやPCの抜き打ち調査もその延長線上にある。
しかし、個人が使うスマホやPCは、今日では最も“プライバシーが集約された場所”であり、国家の強制的な介入などあってはならないはずだ。個人の端末には政府批判の画像やメッセージが記憶されている可能性は高く、これが施行されれば、習政権に反感を抱く市民や外国人が簡単に拘束されることは想像に難くない。
2014年の反スパイ法の制定以降、中国では大手商社の社員や研究者など日本人の拘束事例が断続的に発生している。これまで拘束された人数は17人に上り、うち5人は未だに帰国できておらず、1人は服役中に病死した。しかも恐ろしいのが、何が法律に違反したのか、どうして逮捕されたかなど具体的な説明がなく、法ではなく政治的な思惑で拘束されている点だ。
今日でも中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、依然として10万人以上の日本人が中国各地で生活しているが、個人のスマホやPCが強制的に調べられたら、これまで以上に日本人が拘束されるケースが増えてくるだろう。
日本企業としては、中国各地にいる社員とその家族をできる限り早期に帰国させ、中国への出張を控え、会議などはオンラインで実施するなど、脱中国を目指したビジネスモデルを進めるべきだろう。今後、中国がいっそう監視を強めるのは目に見えており、中国での長期滞在は必然的に邦人拘束の可能性を増やすからだ。
(北島豊)