同情や愛情を悪用「SNS型投資・ロマンス詐欺」被害拡大の厄介な背景

 SNSを通じて接触し、金をだまし取る「SNS型投資・ロマンス詐欺」の被害が全国で急増している。

 千葉県警松戸署は6月12日、松戸市内の77歳の男性が、SNS上のロマンス詐欺に遭い、現金約1億円を騙し取られたと発表。アプリでやり取りをしていた女から、「叔父は大学の教授で、30年以上の経済学のキャリアを持っている」などといったメッセージを受けて投資を勧められるうちに親近感を抱き、FX取引の名目で複数回にわたり、現金約1億円を指定された口座に振り込んだという。

 SNSを使った詐欺は2023年7月頃から全国で被害が急増している。SNS型は相手と信頼関係を築いた上で、中長期にわたって金をだまし取るのが特徴だ。

 詐欺問題に詳しいライターが語る。

「松戸市のケースは被害額が約1億円だったこともあり大きく注目されましたが、実際には300~500万円くらいのケースが多い。最近は紛争地帯に赴任している医師などを名乗り、『事故にあってケガをして入院しているので帰れない』などといって相手に送金を要求する。ビットコインなどの暗号資産をやり取りするケースも増えており、この場合、追跡はかなり困難になります。金はほぼ戻ってこないと考えた方がいいでしょう」

 最近はロマンス詐欺事件がニュースなどで取り上げられることも増えており、身内がSNSでのやり取りを目撃し、詐欺被害に遭っていることが発覚することもある。ところが、肝心の本人が頑なに本物と信じて疑わず、周囲の話に一切耳を傾けないという事例も少なくないのだとか。

「こうなると厄介です。親族がいくら詐欺だといっても、当の本人がすっかり信じきってしまい、逆に怒り出す。詐欺師は金がなくなった時点で相手を見限り、以降は連絡を絶つため、その時点で初めて詐欺と気付くわけです。まずは余計な金を送らないようにするしかないですね」

 そもそも一度も会ったことがない相手から送金を求められたら、その時点で詐欺を疑った方がいい。優しい言葉を掛けられても、くれぐれも同情など見せてはならないのだ。

(ケン高田)

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