【実録・隣人トラブル】深夜の騒音に腹を立て…ナイフ男に下された判決の中身

 アパートやマンションなどの共同住宅につきものの騒音トラブル。ネット上でも「隣室のテレビがうるさい」「上階の子供が走り回って迷惑」といったケースが散見されるが、もしも冷静な判断を失い、“暴力行為”に出たら、どんな罰を受けるのか。一例となる事件の判決を紹介したい。

 5月中旬、東京地方裁判所で行われた刑事裁判。罪状は「暴力行為等処罰法違反の疑い」で、被告は50代後半の無職男性。今年3月、被告は同じアパートの隣室に住む被害者男性(40代)の騒音に腹を立てて、隣室を訪問。「うるせえな」と刃渡り約29.5センチのサバイバルナイフを突きつけると、被害者男性は警察に通報。被告は約5分後に駆け付けた警官に逮捕され、2カ月以上経って初公判を迎えることとなった。司法記者が解説する。

「被害者男性は深夜の2時頃、電話で知人と通話。この声が壁を通して被告の部屋に漏れてきたとのこと。被告は壁を叩いて、抗議したものの、通話がやむ気配はない。じつは被告は数年前からうつ病と睡眠障害を患い、生活保護を受給していました。事件があった時も、治療中で、被告は隣人の騒音について『半年以上前から悩まされていた』と証言していました。なお、被告には前歴があり、SNS上に誹謗中傷を書き込んだことで名誉棄損罪で起訴されています」

 隣人にサバイバルナイフを突きつけた理由について、被告は「ナイフを見せれば(通話を)やめると思った」と述べ、「これからは二度と短絡的な行動はとりません」と反省の意を示していた。初公判開始から約1時間が経過し、裁判は異例のスピード判決となる。

「検察側は罰金20万円を求刑した際、時計が12時をまわっていたことから、判決は後日になるかと思われたのですが、弁護側の要求で、その場で即日判決となりました。判決は求刑通り、罰金20万円。未決勾留期間中、1日を5000円に換算するので、実質的な支払いはナシ。判決を急いだ理由のひとつが、支援者の存在。事件現場となったアパートはすでに引き払っていますが、この日、証人として出廷した社会福祉士の女性は、すでに施設への入居手続きを済ませていると話し、一刻も早い社会復帰を訴えていました。判決が出れば、被告も手錠をつけたまま拘置施設へ戻らなくても済むわけですから、裁判官が温情判決を下したということになります」(前出・司法記者)

 たとえ隣人の迷惑行為に悩まされても、暴力行為は厳禁。管理会社に相談するなど、穏便な解決方法を模索してほしい。

(倉田はじめ)