12月27日、日本を代表する老舗すし店「久兵衛」がホテルオークラ東京の建て替えによって、出店エリアをメインから新本館の片隅に追いやられたことで名誉が傷つけられたと1000万円の損害賠償を求めた裁判の判決が東京地裁で下された。結局、久兵衛の訴えは退けられたが、ネット上では久兵衛に対し冷ややかな声が相次いでいる。
ホテルオークラ東京は2019年9月に『The Okura Tokyo』として新装開店したが、改装にともない1964年から同ホテルのメインエリアで営業していた久兵衛はメインの飲食店が入る西側のビルではなく、東側のビルの片隅を移設先に指定されたため、「協議をすることなく“格落ち”エリアに追いやられ、高級飲食店のブランドを傷つけられた」と、1000万円の損害賠償を求めていた。
しかし、これに対して成田晋司裁判長は、オークラ側が久兵衛の格に配慮した出店場所を用意するような「義務を負うと解することはできない」と説明。また、たとえ両者が協議していたとしても「店舗の位置が原告の希望通りになったかは判然としない」として、久兵衛の訴えを退けたのだった。
「この判決を受けネット上では、《格の高いすし屋だから思い通りの場所に出店させろというのはメチャクチャな理論だと思っていたけど、やっぱり敗訴したか》《むしろどこに勝機を見出して裁判にまで至ったんだろう。本当に謎》など久兵衛側の敗訴は当然とする意見が多く、中には《裁判したことで店の看板が傷ついたのでは》といった懸念も寄せられました。1935年創業の久兵衛は、ウニやイクラを海苔で巻いた軍艦巻きを考案したり、高級店では一般的な『一見さんお断り』や『時価』といったものをなくしたりと、むしろ格式張らないことが大きな魅力で、人気を博した理由のひとつだったとも言えます。それだけに、客にはあまり関係のないプライドや形にこだわる訴え自体に“残念”と思った人は多いようですね」(フードライター)
果たして実際、久兵衛はどんな思いで今回の裁判を起こしたのだろうか。
(小林洋三)
*写真は東京地裁