日本では転売ヤーも出現! 北朝鮮が外貨獲得をかける「低糖質ビール」は有名ブランドに負けない味だった

 異論はあるものの、昔から「女性の美しさ」と「冷麺の味」は、韓国より北朝鮮のほうが上、とも言われてきた。そんな中、今度は「ビールの味」が加わったとして話題になっている。

 食糧難で毎年、多くの餓死者が出ているという北朝鮮でビールが販売されていること自体、違和感を覚えるが、首都平壌にある大同江工場で作られる「大同江(テドンガン)ビール」が市民に大人気で、隣接するビアホールも、外国人観光客の定番コースにもなっているというのだ。

 北朝鮮ウオッチャーが説明する。

「かねてから北朝鮮には『龍城(リョンソン)』『鳳鶴(ポンハク)』といったビールはあったものの、味は今ひとつだったとされます。そこで『人民に良質なビールを届けたい』という故・金正日総書記による旗印のもと、イギリスで廃業したビール工場設備を買い取って、そのまま平壌へ移設。2002年4月に生産がスタートしたのが、現在北朝鮮で最も飲まれている『大同江ビール』なんです。大同江とは平壌市内を流れる河川の名称で、金総書記の肝いり事業ということもあり、製造にあたって工場責任者がイギリスやドイツなどへ研修へ出かけ、著名なビールも徹底研究。結果、これまでに麦と米の配合比率などにより味の異なる7種類のビールが販売されてきたんです」

 7種類は、それぞれアルコール度数や原料配合の違いによりラベルの番号が異なるが、以前、韓国の醸造専門家が韓国ビールと飲み比べた際には、全員が揃って「朝鮮のビールのほうが断然ウマい」と大絶賛したとの逸話も残されている。

 そんな北朝鮮が健康志向を意識した低糖質の「大同江ビール」を新商品として販売。国内だけでなく国境と隣接する中国側のレストランにも販路を拡大し、外貨獲得手段の一助を担っている、と共同通信が伝えたのは5月19日のこと。報道によれば、「8番目」のビールは、糖質を抑え低カロリーで、「すっきりとした味わい」と、平壌でも好評で、北朝鮮と国境を接する中国東北部にある系列飲食店でも、クラフトビールの一つとして1杯28元(約610円)で提供されているという。

「8種類のビールのアルコール度数は、おおよそ4.5%~6%程度。工場関係者によれば、中国人をはじめアジア人にはアルコール度数3~4%のビールが好まれ、欧州人は度数がやや高めのものが好む傾向があるのだとか。ビアホールでは生ビールとして1杯1米ドル程度で販売され、平壌市内のホテルの売店や国営百貨店でも1本95~140北朝鮮ウォン(1ウォン=約1円未満)で購入が可能です。ただし、経済制裁がかけられていることから、日本人が北朝鮮で購入しても日本に持ち帰ることはできません」(同)

 ただ、「大同江ビール」は日本のビール愛好家の間でもかねてから人気が高く、中国で商品を購入し、それを日本国内からオークションサイトで高額転売する転売ヤーが後を絶たない。しかしこれは、もちろん違法。発覚すれば、それなりのペナルティーが科せられることになることを忘れてはならない。

(灯倫太郎)

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