習近平の“脅し”が“本気”になる台湾・頼清徳新政権で有事勃発の「着火点」

 中国人民解放軍で台湾海峡を管轄する東部戦区が5月23日から、2日間の日程で台湾周辺で大規模な軍事演習を行った。場所は台湾の北部、東部、南部の海域、中国大陸が間近な金門島や馬祖島など台湾離島で、海軍、陸軍、空軍、ロケット軍と全ての軍隊が参加。制海権や制空権の奪取や実戦を想定した訓練となった。

 台湾では20日、1月の総統選挙で勝利した民進党の頼清徳新総統の就任式が行われ、日本からも30人あまりの国会議員が参加した。頼氏は中国と統一もしないし独立も宣言しないとする現状維持路線を継承し、中華民国(台湾)と中華人民共和国は互いに隷属しないという意思を改めて示したが、中国はそれに強く反発。必ず反撃して懲罰を与えると警告していた。

 中国はすぐに“有言実行”に出たわけだが、習近平政権は頼氏の掲げる現状維持路線では到底納得がいかないようだ。3期目の習政権にとって最大の目標は「台湾の統一」である。絶対に譲れない利益を「核心的利益」と位置付け、それらは新疆ウイグル自治区、チベット自治区、香港、台湾が当たるが、新疆ウイグルやチベットは完全に中国化されている。

 近年、香港でも民主派が一掃され、国家安全条例が施行されるなど“中国化”がほぼ貫徹されている。要は、今日の中国にとって台湾は最後の核心的利益となっており、香港の中国化が完了したいま、台湾への意欲は相当なものがあろう。

 習政権は民進党の頼氏を台湾独立派と敵視し、対話に応じる姿勢は一切見せておらず、いっそう軍事的圧力を強化することは間違いない。

 戦争というものは、1つの小さな衝突を通じて一気に事態が爆発する。中国軍機と台湾軍機の衝突などが起これば、中国軍が自衛の権利だとして台湾本土や離島を空爆する恐れもあり、それによって有事を迎えるかもしれない。頼政権下でそうした事態になる可能性は決して低くないのだ。

(北島豊)

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