日本を含め実は世界でも「激辛ブーム」が起こっている昨今。そんな中で5月17日、昨年9月に死亡した米マサチューセッツ州に住む少年(当時14歳)の死因を巡って、現地検視当局が原因は激辛成分の大量摂取だったとする報告書を公表。全米メディアにより大々的に報じられた。
報道によれば、死亡した少年はソーシャルメディアで、激辛トルティーヤチップスを食べるチャレンジ企画に参加。その後、ほどなくして心停止状態に陥り死亡したというのだが、
「少年が参加したのは、激辛素材がまぶされたチップスを食べる『ワンチップチャレンジ』という企画で、使われたのは米チップスブランド『パキ』のチップス。これには、世界のトウガラシの辛さランキングでも上位として知られるキャロライナ・リーパーとナガバイパーという2種類のトウガラシの粉がまぶされていた。SNS上では、こういった激辛チップスを食べた後に水などを飲まず我慢できるかを競い合うチャレンジ動画が後を絶たない。なかには辛い物好きな人でも相当苦戦するスナックもあり、その苦悶の表情が大ウケすることから、激辛専門のユーチューバーまで登場するほどです」(国際部記者)
検視報告書によると、少年の死因はトウガラシの辛味成分であるカプサイシンの大量摂取による心停止と断定されたが、少年にはもともと心臓疾患があり、当局ではその影響があった可能性も指摘している。
近年、日本でも以前は大盛り上がりだった「大食い」チャレンジ番組が減少、代わって「激辛」チャレンジがブームになり、「激辛ユーチューバー」が登場しているが、むろんリスクと隣り合わせになっていることは言うまでもない。
「基本、辛いものを食べると汗をかきますが、それを促すのが辛み、痛みの成分であるカプサイシンです。カプサイシンには胃の粘膜を保護するなど胃腸に良いとされる作用があり、アドレナリンの分泌を促し代謝がよくなるため脂肪減少にもつながるというメリットもあります。また、唐辛子に含まれるビタミンEには、動脈硬化や心筋梗塞を予防する効果も期待できます。しかし、それはあくまでも少量を摂取した場合の話。逆に大量に食べ続ければ胃の粘膜に傷がつき壁が剥がれてしまいます。そうなれば胃があれて下痢が続き、ひどい場合はしびれが起きたり、食道や胃、腸などから出血することもあり、最悪、アレルギー反応などで脳梗塞になるケースもあるんです」(医療ジャーナリスト)
しかも、よくカプサイシンは脂肪を燃焼させるから、ダイエットに効果的だ、という話を耳にするが、栄養学的に言えばカプサイシン自体には脂肪を燃やす働きはなく、運動と組み合わせることで初めて脂肪燃焼効果が促される。つまり、痩せようと思って辛いものだけを食べ続ければ、命を危険に晒す恐れさえあるというわけだ。まさに「過ぎたるは猶及ばざるが如し」ということである。
(灯倫太郎)
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