内紛スーダンでウクライナ特殊部隊が潰しに動くロシア「金」資源のウマ味

 現在、「金(ゴールド)」の高騰が続いているが、紛争地ではその金を巡り激しい争奪戦が繰り広げられている。3年目に突入したロシアのウクライナ侵攻のウラで、何の関係もないと思えるアフリカ大陸を舞台に壮絶なバトルが勃発しているという。実態を米通信社記者が解説する。

「ロシアとウクライナの戦いが、思わぬ地、アフリカの北東の地・スーダンでも勃発している。背景には、ロシアが世界屈指の金の採掘地、スーダンの金でボロ儲けしている実態があり、ウクライナがそれにストップをかけるべく動きを見せているんです」

 ロシアのウクライナ侵攻とイスラエルのパレスチナのガザ地区への攻撃の陰に隠れているが、スーダンは1年前からクーデターにより実権を握った国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の間で深刻な内戦が起き、国民にも多大な被害が出ている地。死者は1万5000人を突破、避難民は850万人を超え、このまま内戦が続けば100万人の餓死者も想定されている。

「対立は国軍の圧倒的な軍事力で簡単に終わると見られていましたが、RSFにはロシアやUAE(アラブ首長国連邦)が裏で支援し、今日まで続く長期戦となっています」(欧州のNPO関係者)

 ではロシアはなぜ、スーダンに関与してきたのか。NPO関係者は言う。

「RSFを率いるダガロ司令官は、金鉱山の経営も行うスーダン屈指の富豪。だからこそ、その権益をも一掃しようという国軍トップのブルハン将軍と相いれない。そして、軍事政権ができる以前からダガロ氏と組んで金鉱山の警備などを請け負ってきたのが、ロシアの民兵組織ワグネルだったんです」

 ロシアのワグネルといえば、創始者のプリゴジン氏がプーチン大統領と親密関係を築き、ウクライナ侵攻で最強民兵組織と注目された。しかし昨年6月、両人の対立が悪化。プリゴジン氏は乗っていたプライベートジェットが墜落して死亡し、プーチン氏に消されたといわれている。NPO関係者が明かす。

「そのワグネルの残党がプーチン氏の指揮下のもとスーダンに残り、RSFへの武器供与や軍事訓練で携わるとともに、タダ同然で金の旨味を吸い上げているという。21年にワグネル経由でロシアにわたっていた金は2000億円相当とも言われ、今はその数倍の金が流れている可能性が高い」(前出・NPO関係者)

 ウクライナは、そのロシアの資金源潰しに躍起というわけだ。

「昨秋に米CNNが、スーダン首都ハルツーム近くでRSF民兵に対しドローンと地上作戦による攻撃を仕掛けたのがウクライナの特殊部隊だとスクープし、世界を驚かせた。さらに今年に入ってからは、ウクライナの英字紙がウクライナ軍特殊部隊がスーダン人兵士2人とロシア人兵士を拘束し尋問する様子を報じている。その尋問でロシア人兵士は、スーダン国軍政府を倒す目的で入国した約100人のワグネル傭兵の1人だと告白したという。ウクライナがスーダンの内戦にまで入り込んでいることには驚かされます」(前出・米通信社関係者)

 ロシアとウクライナ戦線の行方には、スーダンの内戦も大きくかかわっているのだ。

(田村建光)

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