吉野家の製麺会社買収 最大目標は国内展開よりも「とんこつラーメン」で海外進出か

 吉野家ホールディングスは4月26日、ラーメンの麺などを製造する宝産業の全株式を取得して子会社化すると発表した。同社は、ラーメンを牛丼とうどんに続く今後の事業の柱と位置づけており、今回の買収はその一環だという。

 宝産業は1970年に創業した製麺会社で、ラーメン店に卸す麺の他、スープやタレなども製造・販売している。吉野家が2019年に子会社化したラーメン店を運営する「ウィズリンクホールディングス」が同社から商材を調達している関係から、グループ傘下入りすることになったとみられている。

「吉野家には、かつて『びっくりラーメン』の運営会社を買収したものの、わずか2年で潰してしまった過去があるため、ネット上には、《吉野家はラーメンでは成功しない》という声もあります。ただ、吉野家HDは16年にミスターラーメンと称される前島司氏が率いて一世を風靡した『せたが屋』をグループ傘下におさめ、吉野家の牛肉を使用したラーメンを提供する『わだ商店』をオープンさせています。また、ウィズリンクホールディングスが運営するとんこつラーメンの『ばり馬』は、中国エリアを中心として国内外に50店舗以上を展開するなど成功しているんです」(飲食店コンサルタント)

 ただ、今回の買収によって吉野家がラーメン店を仕掛けるのは、主に海外になる可能性が高いという。

「国内には『丸源ラーメン』や『天下一品』『来来亭』『山岡家』などラーメンチェーンはレッドオーシャン状態です。一方で、ラーメンは今や世界的なブームとなっていますし、特に海外ではとんこつラーメンがダントツの人気。宝産業は国内工場の他にも、アメリカやフランス、タイ、インドネシア、フィリピンにも拠点を持っています。同社を傘下におさめた背景には、とんこつがウリのばり馬の海外進出を加速させていきたいという狙いがあるのではないでしょうか」(前出・コンサルタント)

 海外では「牛丼の吉野家」ではなく「ラーメンの吉野家」が定番となるのかもしれない。

(小林洋三)

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