岸田政権で副総理の立場にある麻生太郎氏は4月23日、ニューヨークで秋の大統領選に臨むトランプ氏と会談した。両者は会談で中国や北朝鮮などインド太平洋地域の問題などを議論し、揺るがない日米同盟の重要性を改めて共有したというが、バイデン政権の関係者は全く下品な行動だと強く非難した。
確かに、この2週間前には岸田総理が米国を訪問し、国賓級の待遇をバイデン政権から受けたばかり。日本の“ナンバー2”が同じ月にバイデン大統領の対抗馬と親しく会談するなど、同陣営からすれば受け入れ難い行動だろう。
しかし、秋の大統領選で両者の支持率は拮抗しているものの、トランプ氏が若干有利な状況が続いており、日本としては今のうちからトランプ勝利の道筋を立て、先手先手で行動することが重要となる。8年前の米大統領選の時、多くの専門家はトランプ氏が勝利することはないと見ていたが、同氏がヒラリー・クリントン氏に勝利した直後から、日本ではトランプとどう付き合って行くのかとの不安が一気に広がった。
それを払拭したのが、安倍晋三元総理だった。米大統領選後、安倍氏は真っ先に黄金のゴルフクラブを手土産にトランプ詣でを行い、トランプ氏から個人的な信頼を獲得することに成功した。
安倍氏は外国の指導者の中で一番早くトランプ詣でを行った人物である。トランプ政権と上手くやっていくためには、同氏とお友達になるのが戦略的に極めて重要となる。実際、トランプ政権1期目の時、トランプ詣でをしなかった欧州諸国の政権は同氏と良好な関係が作れなかった。
麻生氏は安倍政権でも副総理を務め“対トランプ”を熟知している。トランプ氏は中国からの輸入品に一律60%の関税を課す、ウクライナへの軍事支援を最優先で停止するなどと豪語しており、大統領に返り咲けば国際情勢が再び不安定化することになる。そのような状況でも日本としては唯一の軍事同盟国である米国と安定した関係を維持する必要があり、今回の麻生氏のトランプ詣での狙いもそこにあった。戦略的かつ、スマートな行動だったのだ。
(北島豊)