麻生太郎「火だるま失言録」を緊急召集する(2)毒舌芸人にたとえられ…

 ここからは、麻生氏の失言録を緊急召集しよう。まずは、衆議院選挙で福岡2区(現・福岡8区)から初出馬した79年にプレイバック。選挙演説に登壇した麻生氏は開口一番、聴衆に向かって「下々の皆さん」と語りかけたという。

「もちろん、本音で口にしたわけではなく、お得意の客イジリでしょう。彼の選挙演説では、目の前にいる支援者や記者との掛け合いで笑いが起きることも少なくありません。ただし、この『下々』発言は公的な記録に残っていないため、真偽は不明です」(地元記者)

 常識的に、初めての選挙演説で有権者を逆なでするような発言をしたとは考えにくい。だが、そんな常識を覆してきたのが、政治家・麻生太郎なのだ。

 続く83年には、美濃部亮吉元東京都知事による革新都政を批判する流れで、

「婦人に参政権を与えたのが最大の失敗だった」

 と発言。くしくも、この年の衆院選で落選の憂き目にあう。

「当選順位最下位の候補者との票の差は、わずか数千票。あの失言がなければ、票が流れて落選することはなかったんじゃないか」(政治部デスク)

 だが、この苦い経験が生かされることはなかった。麻生氏は、またもや軽視発言で女性を敵に回すのだ。

 18年、財務省の福田淳一元事務次官が大手メディアの女性記者に対してセクハラ行為を働いたことが一部週刊誌で報じられた。

「この問題を受けて福田氏は辞任。財務省は内部調査を実施し、福田氏のセクハラを認定して減給20%、6カ月相当の処分を下しました」(政治部デスク)

 にもかかわらず、麻生氏は、のちの記者会見で驚くべき見解を述べる。

「セクハラ罪っていう罪はない。殺人とか強制わいせつとは違う」

「♯MeToo運動」の機運高まる女性たちが、黙っているはずもなく、団体関係者ら約100名が財務省前で抗議活動を行う騒ぎに発展した。なぜ麻生氏は、頑として男性上位主義の姿勢を崩さないのか。

「セクハラ擁護発言は、政治思想によるものではなく、組織防衛のためのもの。大臣の立場上、セクハラを否定する部下の報告をムゲにはできない。もしもメディアにならって弾劾しようものなら、今後の指揮系統に悪影響が出かねませんから」(政治部デスク)

 組織を守るという大義名分は結構だが、セクハラ被害者の気持ちは置き去りではないか。

 政界関係者によれば、その騒動の渦中、麻生氏は懇意にしている記者たちのぶら下がり取材に応じて、

「福田(元事務次官)ってのもアンチ政権のメディアのヤツとよくサシで飲んだよな」

 とポロリ。このオフレコ発言の真意とは‥‥。

「セクハラ被害を受けた女性記者のメディアでは、当時の安倍政権を批判する報道ぶりが目に余っていましたから。身から出たさびだよ、とでも言いたかったのでしょう」(政界関係者)

 部下は事務次官の職を辞したが、上司の麻生氏は12年から財務大臣の座に居座り続けている。

「タブーな発言を繰り返しても、辞任に追い込まれることもない。毒舌が売りの大御所芸人にたとえる自民党議員も多く、中には『麻生さんはいいよね。あんなに失言してもみんな気にしなくなっている』なんて羨む声もあるくらいです」(自民党議員秘書)

 国民から反感を買いまくる「失言王」が羨望の的となっているというのだ。このユルすぎる雰囲気について、鈴木氏は、長く続く「安倍一強」が影響していると指摘する。

「残念ながら今の野党には、安倍政権を脅かすほどの力はありません。政権交代の緊張感があれば、気を引き締めるものです。おのずとスキャンダルや失言は減少します」

 麻生氏の火だるま失言を生んだのはふがいない野党、という見方もできる。

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