日本での知名度はあまりないが、モータースポーツの最高峰カテゴリーのひとつで“電気自動車のF1”と呼ばれる「フォーミュラE」。その今シーズン第5戦「東京 E-Prix」の決勝レースが3月30日に東京・お台場で開催される。
しかも、通常のサーキットで行うレースとは異なり、東京ビッグサイトの駐車場や周辺の一般道を使用した1周2.582㎞の特設コース。日本では初となる本格的な公道レースだ。
市街地で行うレースとしては、世界3大のレースの1つに数えられるF1の「モナコグランプリ」、世界各国のF3チャンピオンが集う“F3世界王者決定戦”の「マカオグランプリ」などが有名。サーキットとは違った迫力があり、モータースポーツファンからも支持されている。
実際、近年は公道レースが増加傾向にあり、24年のF1でもモナコをはじめ、第2戦ジッタ(サウジアラビア)、第16戦バクー(アゼルバイジャン)、第17戦シンガポールと24戦中4戦が市街地コース。フォーミュラEに至っては16戦中8戦と半分だ。
「しかも、公道だけでなく第9戦・10戦が開催されるベルリン(ドイツ)では空港の滑走路をコースを使用。F1以上にバリエーションに飛んでおり、歴史はまだ10年と浅いものの世界中で人気が拡大しています」(モータースポーツ専門誌編集者)
ただし、関係者の間では「日本での公道レースは難しい」と以前から言われていたとか。今回なぜ、東京での公道レースが実現に至ったのか。
「フォーミュラEの特徴はその静音性にあります。EV車なのでF1の走行音が120デシベル前後なのに対して80デシベル前後。一般の市販車(70デシベル程度)より少し大きい程度のため、従来の市街地レースに比べ騒音の苦情が少ないんです。また、ガソリン車ではないので排気ガスも当然出ません。そのため、開催地は環境問題への取り組みを間接的にアピールすることができます」(同)
確かに、小池百合子都知事は東京で開催が決定した直後の昨年6月の定例会見で「環境問題に積極的に取り組んでいる都市であることを発信できる絶好の機会」と述べており、今の時代に沿ったモータースポーツの形ともいえる。
それでも最高時速は320㎞とマシンの速さはそのまま。当日は環境に優しくも白熱したレースを期待したい。