MLBドジャース・大谷翔平の通訳だった水原一平氏がギャンブル依存症で、抱えた借金返済のために様々なウソをついていたという問題は、“大谷フィーバー”に思い切り水を差すことになった。こうした事態となれば当然、「スポーツベッティング=諸悪の根源」の風潮になるわけで、日本における「推進派」にとっても大きなマイナスになるだろう。
「日本のスポーツベッティング推進の動きは、民間ではIT企業が、官ではスポーツ振興くじ(toto)を管轄する文科省、ほか経産省などが旗振り役になっています。現在、競馬や競輪などの公営競技はアプリで投票し、アプリ内の実況中継で結果を知るのが主流の時代。オッズパークやウィンチケットなどはテレビCMで名前を聞いたことがある人も多いでしょう。公営競技でのネット投票のはじまりは、1974年の電話投票に遡りますが、IT技術と非常に親和性が高い。楽天グループやサイバーエージェントを中心としたIT企業の多い経済団体の新経済連盟では、スポーツベット解禁に向けロビー活動を行っていますが、コロナ禍がいよいよ本格化した20 年12 月には、公営競技アプリが非接触で重宝され優位性を発揮したことから、スポーツベット推進を提言。推計売上を7兆円としました」(経済ジャーナリスト)
この20年12月には、totoにプロバスケ(Bリーグ)も対象として加えるという法案が成立したように、totoの延長線上で拡大を図りたい文科省の存在があるが、これとは別に経産省も前のめりだ。
「両省庁ともに有識者会議を開催し、この分野での提言をまとめています。双方が積極的なのは、従来のtotoのようにまずはスポーツ振興での財源確保があり、新しくは、学校部活動の民民間委託での財源確保、そして世界で広がるスポーツベット解禁を受けた変化の必要性、また、国内の資金や税収が海外ギャンブルで国外に逃げ出すことを抑えるという狙いもあるとされています」(同)
だが、今回の水原氏の問題を「しめしめ」と見ているのが、読売グループだろう。これまでもプロ野球へのtoto導入で障壁として立ちふさがった経緯がある。
「その理由は簡単。『紳士たれ』という前時代的な姿勢を崩さない巨人軍を擁する企業として、勝手なことはまかりならん、というわけです。22年には自民党内でスポーツベット解禁の動きが高まっているとして、反スポーツベット解禁の連載記事を始めた経緯があります」(全国紙記者)
さてこの問題、水原氏の問題の中身がより詳しく見えてくれば、推進派へのダメージはさらに大きくなるかもしれない。