名作「北の国から」には「東日本大震災」「原発事故」「コロナ禍」を描いた“幻の続編”があった

 来たる3月24日は、2021年に亡くなった俳優・田中邦衛さん(享年88歳)の命日。国民的大ヒットドラマ「北の国から」シリーズの主演を務めたことで知られているが、実は映像化されていない“幻の続編”があったのはご存じだろうか。

 そもそもこの作品は、1981~82年の全24話の連続ドラマ版をはじめ、以降も83年、84年、87年、89年、92年、95年、98年と定期的にSPドラマ版が放送。2002年の「北の国から 2002遺言」で一応完結したことになっているが、ファンから続編を求める声も多かった。

 そのため、こうした声を反映させたウワサかと思いきや、続編の存在を認めたのはシリーズの原作・脚本を手がけた倉本聰氏。連続ドラマ版の第1話の放送日から40年後の21年10月9日、物語の舞台となった北海道富良野で開催された「北の国から 40周年記念トークショー」の中で倉本氏が詳細に語っているのだ。

「東日本大震災や新型コロナなど実際に起きた出来事を盛り込んだストーリーになっています。『98時代』で幼なじみの正吉と結婚した蛍(中島朋子)は、福島第一原発に程近い福島県富岡町に移住。ところが、消防署員だった正吉は、津波に巻き込まれて行方不明なる衝撃的な展開から始まることを明かしています」(テレビ誌編集者)

 避難制限が一部解除された14年には五郎(田中邦衛さん)は正吉を探そうと現地で砂浜を掘り続けるが、手がかりすら見つからず、純(吉岡秀隆)によって富良野に連れ戻されることに。その後、18年に五郎はがんの疑いで入院するが、怖くなってMRI検査の途中で逃げ出してしまう。

 コロナ禍では札幌で医療廃棄物の回収の仕事を行う純、看護師として病院で感染者の看護にあたる蛍は、五郎と連絡が取れず音信不通状態。そんな中、最期の時が刻一刻と迫ってきた五郎は、病院や自宅のベッドの上で迎えるのではなく1人で山に入ってしまう。

「現代人の亡くなり方ではないですが、イベントでは実際に富良野に足を運んだ吉岡秀隆が倉本氏と“次回作”について何度も話し合っていたこと、脚本も何度も修正を加えて第7稿まで練り上げていたものの、諸般の事情で映像化には至らなかったそうです」(同)

 ちなみに田中邦衛さんの遺作は10年公開の映画「最後の忠臣蔵」。その後は健康問題がたびたび報じられ、撮影に耐えられる状況ではなかったとも言われている。一方でフジテレビが続編制作に消極的だったと伝える記事もあるが、理由については明かしていない。

 もし制作されていれば“真の完結編”になっただけに残念な限りだ。

エンタメ