ロシアと中国「月面原発建設」裏に潜むプーチンの「核兵器を宇宙配備」計画

 米下院情報特別委員会のマイク・ターナー委員長が、「深刻な国家安全保障上の脅威が確認された」として、その情報をすべての議員が共有する旨、声明を出したのは、2月14日のことだった。その後、「脅威」が明らかになると、全米メディアが大々的に報じたのだった。

「ターナー委員長の言う『国家安全保障上の脅威』とは、ロシアによる核兵器の宇宙空間投入でした。ロシアが開発中のEMPという核兵器は、爆発時の巨大なエネルギー波動により衛星の電子回路を焼き切って無力化するもので、使用されれば、軍事衛星だけでなく通信や放送、観測衛星などすべてに重大な問題が生じる可能性があり、世界は大パニックに陥るでしょう。そのため、ブリンケン米国務長官は、この情報を中国の王毅主任(外交部長兼職)、インドのジャイシャンカル外相に伝え、『両国でなんとかロシアを止めてほしい』と働きかけたと報じられました」(国際部記者)

 ところが、そんな騒動から約1カ月後、再びロシアから不穏なニュースが飛び込んできたのだ。

 3月5日、ロシアの国営宇宙開発「ロスコスモス」のボリソフ社長が、国際フォーラムで講演中、2035年の月での原子力発電所建設に向け、現在中国と共同で取り組んでいる、と述べたというのだ。この情報をロシアのインタファクス通信が報道すると、当然ながら西側諸国に大きな衝撃が走った。

「実は、ロシアと中国とは昨年11月、2027年までの宇宙協力協定を締結していて、内容は両国で国際月面研究ステーション(ILRS)を開発、建設し、共同で月面を探査するというものです。ところが、そんな最中に飛び出したのが、ロシアによる核兵器の宇宙空間投入問題でした。この状況にアメリカは、ロシアだけでなく共同開発を進める中国に対しても大きな危機感を募らせています」(前出・記者)

 西側諸国が中国の動きを注視するのは、これまでも中国の「キラー衛星」により、さまざまな攻撃を受けてきたという背景があるからだ。

「アメリカが湾岸戦争やイラク戦争でピンポイント攻撃ができたのは、衛星の『目』があればこそ。つまり、アメリカの軍事にとって衛星こそが要と言っても過言ではない。ところが、キラー衛星は、標的となる衛星の機能を喪失させ、破壊してしまうのです。2010年以降現在に至るまで米国は中国のキラー衛星に悩まされ続けていますからね。もし、ロシアと中国が宇宙で手を組んだ場合、西側諸国は、最大の軍事的脅威に晒されることは間違いありません」(前出・記者)

 宇宙空間での核兵器使用は、1963年の部分的核実験禁止条約(PTBT)や、67年発効の宇宙条約でも禁止され、ロシアも、その条約に署名している。とはいえ、月面に原子力発電所が建設されれば、理論的には核開発も可能になると言われる。

 宇宙での核の存在をちらつかせるロシアと、そこに乗るような形で米国を揺さぶる中国。宇宙を巡る両国の動向から目を離してはならない。

(灯倫太郎)

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