自転車による関連事故件数が7万件超(2023年)になる中、日本では来年4月1日から自転車の交通違反に対し「青切符」の導入が決定。自転車事故減少について、国を挙げた取り組みが強化されていくことだろう。
一方、お隣の韓国でも自転車による事故が問題となっているのだが、急増中なのが何と「ブレーキなし自転車」による暴走だというのだ。自転車競技専門のライターが説明する。
「ピクシー自転車と呼ばれるブレーキなし自転車は、もともとはスピードを重視するトラック競技等で使用されていたもので、シングルスピードと呼ばれる単一ギアのため、走行中にギアチェンジが不要。ブレーキが付いていないのは、レース中にブレーキをかけることで後続車とぶつかり事故が起きてしまうことを防ぐためです。つまり、速く走ることだけを重視し、余計なものすべてをそぎ落とした自転車なんです」
最初にストリートカルチャーで注目されたのは、1970年代後半。ニューヨークのメッセンジャー達の間で大流行したことがきっかけだったようだ。
「一見おしゃれですし、余計な機能がついていないので低価格で庶民でも手が届きやすい。そこへきて、バイクメッセンジャーがニューヨークの街を駆け抜けるアクション映画として大ヒットした『プレミアムラッシュ』(2012年公開)で火が付き、ブームを定着させというわけなんです」(同)
とはいえ、公道で運転すれば事故が多発することは言うまでもない。日本の道路交通法では、基準に合うブレーキがない自転車を公道で運転してはならないと定められており、さらに、2013年7月には東京都が自転車安全条例を制定。「自転車小売業者は、自転車の利用が道路交通法その他の自転車の交通又は安全性に関する法令の規定に違反することとなることを知って自転車を販売してはならない」と定義し、ブレーキのついていない自転車の都内での一般販売を明確に禁止している。
「それでも購入後に自らブレーキを取り外して運転するケースが全国的に増え、重大事故も多発。取り締まりが強化されたことで、日本では徐々に影を潜めるようになったんです」(同)
もちろん、韓国でも道交法上で公道での使用は明確に禁止されている。だが、いまだ多くの若者が違法という認識を持たぬまま市街地を走行し、連日のように事故報告が伝えられているという。
「ノーブレーキの自転車販売について、韓国ではこれを規制する法律がないため、オンライン・オフライン問わず、どこの店でも簡単に同モデルの購入が可能です。加えて学校や地域社会でも、ブレーキがない自転車の構造的な危険性や法的問題に対し、まったくといっていいほど教育がなされていないのが実情。結果、若者たちはただ単にかっこいいから、トレンドだからとの理由で安易に購入し、重大事故の急増につながっているというわけです」(同)
そもそも、ブレーキとは危険を回避するために付いているもの。それを外して運転すれば、どうなるかは教えられなくても分かるはずなのだが…。後悔先に立たず。無謀な暴走が人の命をいとも簡単に奪うことを忘れてはならない。
(灯倫太郎)