「米大統領はトランプよりバイデンがいい」プーチン大統領が明かした本音とは

 2月10日、米サウスカロライナ州での選挙演説で放たれたトランプ前大統領の発言が、またしても物議を醸している。

 トランプ氏は、かつて出席したNATO(北大西洋条約機構)首脳会議で、某大統領から「我が国はNATOへの国防支出が未達の状態だが、ロシアに攻撃されたら守ってくれるか」と尋ねられ、「それなら守らない。むしろやりたいようにやるようロシアに勧める」と答えたことを明らかにしたのだ。

 トランプ氏はかねてから、NATOに十分な資金的負担をしない加盟国を防衛しないと主張してきたが、この発言に対しバイデン大統領は、「ぞっとするほど危険だ」と話し、加盟国への集団的防衛義務の軽視が、プーチン大統領の「さらなる戦争と暴力を容認するものだ」と真っ向から非難した。

 そんな中、プーチン氏は2月14日、露国営テレビのインタビューを受け、11月の米大統領選について、「バイデン氏のほうがトランプ氏よりもロシアにとっては望ましい」と答えた。この発言はすぐさま西側をかけ巡り、プーチン氏の真意についてさまざまな憶測が広がっている。

「プーチン氏は、バイデン氏のほうがロシアにとって望ましいと答えた理由を、『彼は経験豊富な予測可能な古いタイプの政治家だから』と述べています。一方、トランプ氏については、『異端の政治家だと思う』として、今回のNATO加盟国を助けない発言についても、『彼にとっては一定の論理があるのだろう』と述べています」(国際部記者)

 確かにトランプ氏には「危険人物」のイメージが定着しており、それは米国の有権者にとっても他国の宰相にとっても同様のようだ。

「トランプ氏は在任中、北朝鮮の金正恩総書記を『ロケットマン』と揶揄し、北朝鮮に対して壊滅的な軍事行動をする予定があると発言。さらに、イランに対しても、アメリカの国民や、それに関連するものを標的にした場合、アメリカは即刻全面反撃に出る、と挑発的な発言を繰り返しました。しかし、その裏では正恩氏を交渉のテーブルにつかせ、イランとの核合意離脱に端を発した両国間の緊張関係も回避。結果、シーア派の拡張路線を抑え、イスラエルがアラブ首長国連邦(UAE)など4カ国との外交関係を樹立するという中東和平を実現させたわけです。つまり、危険人物というイメージを最大限に利用し、相手を交渉のテーブルにつかせる、これがトランプ氏の『予測不可能』なところであり、バイデン氏との決定的な違いなのです」(前出・記者)

 老獪なプーチン氏であっても、トランプ氏の「セオリーなき言動」は脅威に映るのかもしれない。

(灯倫太郎)

ライフ