東京商工リサーチによると、2023年1~11月の「宅配ピザ店」の倒産件数が過去最多を更新したと発表した。コロナ禍に大人気だった宅配ピザだが、その間、大手チェーンが手を変え品を変え割引キャンペーンを実施したことが、むしろ宅配ピザ業界を苦境に追いやったとの指摘もある。
23年1~11月の宅配ピザ店の倒産は13件となった。集計を開始した09年以降は17年、18年、20年でそれぞれ年間6件が最多だったが、それを2倍以上も上回って更新。東京商工リサーチによると、新規参入が相次ぎ競争が激化したことや新型コロナ5類移行の反動、材料費高騰、人手不足などによって厳しい経営環境に巻き込まれたことが原因としている。
「宅配ピザ店倒産の一因には、大手チェーンのキャンペーン攻勢もあったのではないでしょうか。コロナ禍では外出自粛が要請されたこともあり、宅配ピザチェーン大手は『Lサイズピザ1枚買うとMサイズピザ2枚無料』や『2枚頼めば1枚無料』『1枚からピザ持ち帰り半額』などキャンペーンを矢継ぎ早に実施し、在宅需要を取り込もうとしました。それは見事に成功して、宅配ピザ業界は市場規模を拡大することに成功しました」(経営コンサルタント)
その一方で、《結局、宅配ピザは半額でもやっていけるのか》《今までの価格設定は何だったのか》といった声も聞かれるようになり、結局はキャンペーン中にしか利用しない人を増やしてしまったようだ。それは宅配ピザ業界全体を苦しめることになり、人件費や燃料代の高騰によって「ピザハット」が1回250円の配達料を導入した際には、《宅配ピザの代金に配送料は含まれてないの?》といった批判を呼ぶことにもなってしまった。
「実際、22年度のピザ市場は過去最高を記録するなど好調を維持していて、3年連続売り上げが減少していた冷凍ピザも増加に転じているといいます。要するに、ピザが食べられなくなったわけではなくて、キャンペーン攻勢によってむしろ宅配ピザを割高に感じ、頼まなくなってしまった人が増えたと考えられるのです」(同)
しばらく、宅配ピザ業界は厳しい経営を迫られるかもしれない。
(小林洋三)