「経済衰退」書いたら摘発!国家安全省が乗り出してきた中国のヤバさ

 中国共産党は想像する以上に追い込まれている――。
 
 と言えば、多くの人は「またか」と反応するかもしれない。中国の政治・経済状況が悪化する度に「中国崩壊論」が繰り返し語られてきたのでそう思われても仕方がない。それでも、中国を長年取材してきた者として「いまの共産党は本当にヤバい」と言わざるを得ないのだ。
 
 確信したきっかけは、12月11、12日に開催された「中央経済工作会議」である。経済運営とは全く関係がない中国国家安全省が同工作会議について論評したからだ。

 国家安全省はスパイなどを取り締まる秘密警察的組織である。その国家安全省が、「中国の特色ある社会主義体制が攻撃を受けている」として、国家安全を脅かす中国衰退論や中国経済に批判的言論を摘発すると宣言したのだ。

 国家安全省は10月末に開かれた「中央金融工作会議」後にも、公式アカウントにて「金融面で混乱を引き起こそうとしている」として、株式市場での「空売り」に強い警告を発している。金融・経済分野に権限拡大し、存在感を強めているのだ。 

 これらの行為は言ってみれば、八百屋が魚屋の仕事に手を突っ込んで、文句を言っているに等しい。中国の経済学者や実業家にとっては受け入れられないはずである。

 ではなぜ、国家安全省がこうした脅しをかけてきたのか。
 
 中国の経済専門家は、巨大不動産の恒大集団や碧桂園が実質破綻に追い込まれようが、若者の就職率が50%を割るような社会崩落に陥ろうが、政府が「景気は回復してきた」「経済成長目標5%は確実に達成される」と大宣伝することに眉をひそめてきた。インターネット空間では「中国経済が行き詰まっている」「中国の夢は幻だった」などと、習近平政府に盾突く投稿が目立つようになっていた。
 
 これに国家安全省が危機感を持ったというわけだが、ビジネスの世界では、中国企業であれ外資企業であれ、経済分析は欠かせない。ビジネスにまつわる経済の説明が取り締まりの対象になるなら、経済活動は委縮し、企業は活力を失ってしまうだろう。
 
 在中30年を超すベテランの日本人ビジネスマンもこう嘆く。

「中国は改革解放体制で生まれた金儲けの自由、考える自由を拡大することで成長・発展を続けてきた。それなのに、経済安全保障の名の下にビジネスに足かせをはめて活力を奪っていくのだから、いまの変化は受け止められない」

 中国は本当の意味で「衰退」に突入したようだ。

(団勇人/ジャーナリスト)

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