米「ブルームバーグ」の報道によれば、中国ではこのほど、政府と国営企業が職員らに対してiPhoneなどの海外製スマートフォンの使用を禁止するとしていた地域を拡大したという。さらに禁止地域が広がる可能性も高く、この施策によりAppleが大打撃を受けるとの声があがっている。
「2023年9月には、中国政府が北京と天津の職員らにiPhoneなどを使用しないよう禁止令を出した、と海外メディアが報じていましたが、今回新たに浙江、広東、江蘇、安徽、山西、山東、遼寧、河北の8省に拡大したとされています。9月時点では、中国外務省の毛寧副報道局長が『iPhoneの使用を禁止する法律や文書は出していない』と否定していますが、口頭などで命じている可能性があると言われていて、組織によっては職場のみならず自宅での使用も禁止されているところもあると報じられています」(社会部記者)
中国はiPhoneの上得意であり、売り上げの17%を占めるとも言われる。仮にさらに使用禁止令が広がり、多くの国民にまで波及した場合には相当な打撃を受けるはずだ。
ところが、Appleが不安を抱えるのはiPhoneだけではない。Appleは、同社の最新のウエアラブル端末であるApple Watchシリーズ9とapple watch ultra 2の、米国内での販売を停止したのだ。
「販売停止は、米医療機器メーカー『Masimo』が、Apple watchに搭載されているパルスオキシメーター(血中酸素濃度測定器)が同社の特許を侵害しているとした訴訟で勝訴したことに端を発しています。この勝訴を受け、米国際貿易委員会(ITC)が12月26日に2つのモデルの(製造国である中国からの)輸入禁止措置を命じることを見越したApple側の判断だったとされています」(前出・記者)
これによりAppleは、クリスマス商戦という絶好の販売機会を逸したことになる。だが、Appleの受難はまだある。
「Appleは、EU(欧州連合)でスマホなどの機器にはUSB-C端子の搭載を義務付ける法案が可決したことから、iPhone15からこれまでのLightning端子を廃止していており、これによってライセンス料が入らなくなっています。しかも、Appleは売上高が4四半期連続で減少するなど商品が売れない状況が続いているんです。その影響もあって来年にはiPadシリーズの新製品の投入を急ぐと同時に、新たな目玉商品と目されているヘッドセット端末『Vision Pro』も予定を前倒しして、2024年2月発売に向けて準備が進められているとも言われています。ただ、Vision ProはAppleにとって新しいカテゴリーの商品であり、同製品の売りである『複合現実』が消費者にどれだけ受け入れられるかは未知数です」(ITジャーナリスト)
中国でのiPhone需要の落ち込みとapple watchの販売停止に加え、不振が続くiPadの売り上げが振るわず、Vision Proが大失敗に終わった場合、2024年、Appleは窮地に立たされるかもしれない。
(小林洋三)