昨年11月、ゼロコロナ政策に対する政府へのいら立ちが募る中、中国各地で拡大した「白紙運動」は、政府による「ゼロコロナ」政策終了を受け一応の収まりを見せた。
しかし、中国国内では今年に入ってからも大規模な抗議デモが後を絶たず、2月15日には湖北省武漢市で医療手当の削減に抗議する大規模デモが発生。米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア」の報道によれば、このデモで中国当局は少なくとも5人を拘束。他にもデモ参加者や、デモの様子をSNSに投稿した4人の行方がわからなくなっているとして、当局が監視カメラで参加者を特定し、拘束した可能性を伝えている。
情報が統制され言論の自由があるとは言えない中国で、数千人規模の人々が集まり、習近平政権を批判した昨年11月のデモは、まさに異例の行動だったわけだが、
「もっと異例だったのは、デモの参加者を当局が表だって逮捕・拘束しなかったことです。天安門事件を経験している中国当局としては、デモに対して相当の拒否反応があるため、何がなんでも初期段階で封じ込めたいはず。ところがあの白紙デモの際は、多くの警察官を配備したものの、だからといって武力による逮捕や拘束はほとんど見られなかった。これは中国では考えられないこと。何かあるなとは思っていたんですが…」
中国ウオッチャーはそう語るが、その「何か」がここにきて、中国国内で多発しているというのだ。
「実は、あの白紙運動への参加者たちが、今になってどんどん行方不明になっているというんです。国際ジャーナリスト団体『国境なき記者団』や、国際人権団体『ヒューマン・ライツ・ウォッチ』などの調査によれば、今年に入ってから中国の活動家たちが次々と姿を消し始め、100人以上の行方不明者が出ているとの報告もある。人権団体や教育機関が拘束した人々の即時釈放を求めていますが、当局が素直に応じるはずもなく、北京のほか上海や広州、南京など複数の都市で抗議した人たちが多数含まれていることから、今後もしばらくはこの行方不明騒動が続く可能性があります」(同)
しかも、起訴の可能性があるため、検察の判断が下るまで数週間、数カ月と拘束期間が延びることも考えられるという。
「当局は拘束した人物の家族に対しても、逮捕拘束について沈黙を守れば早めに釈放してやるが、応じなければ仕事も年金も失うことになる…などと圧力をかけているという情報もあります」(同)
災難は忘れた頃にやってくるというが、11月のデモ参加者にとっては、まさに忘れた頃にやってきた取り締まりだったようだ。
(灯倫太郎)