「来年こそ」が許されない矢野阪神に“コイ叩き”の至上命題

 鳥谷敬の”退団決意”で揺れる阪神だが、編成面では既に来季に向けて動き始めている。矢野燿大監督にすれば、チームの功労者で精神的支柱でもあった鳥谷のいなくなるチームを指揮していかなければならない。鳥谷の残り試合のケアもしなくてはならないが、そんな余裕はなさそうだ。

「矢野監督はすでに来季続投を伝えられましたが、阪神経営陣は『今の阪神は戦力が揃っている』と見ています。鳥谷に引退を勧告したのも、その一環です」(在阪記者)

 近年の阪神には、一つの傾向が見られる。監督就任2年目に好成績を上げているのだ。フロントがその傾向に期待をかけているのは本当だが、今季も「戦力が揃っている」という認識があるため、今の成績では物足りない。ペナントレースが残り20試合を切ろうとしている時点で、4位。3位広島とのゲーム差は「2」(9月2日時点)。連勝の波を一度掴めば、Aクラス入りは十分に可能だ。

「阪神監督が就任2年目に好成績を収めているのは、戦力不足の状況で監督を引き受けたパターンが多い。星野仙一氏がとくにそうでしたが、矢野監督は戦力が整っている状況での就任でした」(球界関係者)

 戦力があるのにAクラス入りできないとなれば、矢野監督の2年目はかなり厳しい目で見られる。今季の残り試合も「来年は優勝を狙える」といった雰囲気を残して終えなければならない。

「去年、今年がそうなんですが、阪神は巨人を模倣しているという球界関係者がいます。何人かの若手が頭角を表す中で、巨人は岡本和真という4番を育て上げました。矢野監督が今年、大山を4番で使い続けたのは『人数よりも主軸バッター』ということを巨人から学んだからだと言われています」(同前)

 5年ぶりの優勝間近の原巨人の好調は、チームを牽引してきた投打のベテランをズバッと切ったところにも要因がある。根底からチームを作り直すとは、そういうことなのかもしれない。阪神フロントが鳥谷に引退勧告をし、福留の去就についても考え始めたのも、巨人が内海、長野を手放した決断に似ている。

「矢野監督は阪神本社の幹部とも会話のできる読書家です。考え方も柔軟で、異業種の人の話にも耳を傾けている。今季、Aクラス入りを果たせば、背広組の信頼も勝ち取れると思います」(前出・在阪記者)

 終盤戦は3位争いで広島を意識した戦いになる。続投宣言が出ても、矢野監督は気持ちが落ち着かないようだ。

(スポーツライター・飯山満)

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